遊撃手最強説
内野手4つのポジョションのうち、最も肩の強さが求められるのはどこでしょうか?
一般的に一塁手と三塁手は守備力の優先度が低く、体が大きく長が力があるががその分動きが鈍重なパワーヒッターが起用されます。
二塁手、遊撃手は守備の上手い選手が起用されます。特にショートはチーム内でも最も守備力の優れた選手が努める花形のポジションで、セカンドよりも肩の強さが求められます。
三遊間の深い位置で逆シングルからのジャンピングスローなどはまさに見せ場です。
154km/hの遊撃手
ソフトバンクの今宮選手は高校時代にMAX154km/hを記録した剛球投手でしたが、プロ入り後は最初から野手に専念しました。もったいないと当時は思いましたが、この判断は正解でした。
ショートとしてその強肩を活かすことで、選手層がどこよりも厚いソフトバンクでレギュラーを奪い、ゴールデングラブ賞を5回も受賞しました。
MLBが欲しがらない二塁手
二塁手でも肩の強い選手はいます。
ゴールデングラブ賞8回受賞の広島カープ菊池選手は大学時代までショートでしたが、プロ入りに後にチーム事情で二塁手にコンバートされ、これがはまりました。
菊池選手は守備範囲がとても広く、打った瞬間ヒットだと思われる打球でもことごとく追いついてしまいます。
なぜ菊池選手が他の選手では追いつけないような打球まで追いつくことができるかというと、普通の守備位置よりも後ろに守っているからです。テレビ中継ではあまり映らないので分かりづらいですが、球場で見るとそんなとこにいるのかと思うくらい後ろに守っています。普通の守備位置はインフィールドラインより少し前ぐらいですが、菊池選手はラインの後ろ1,2メートルの位置にいます。
だから他の選手ももっと後ろに守れば、より多くの打球に追いつけるようになります。
問題はそこからです。後ろに守ればそれだけ打ってから打球を捕るまでの時間が長くなり、また一塁までの送球距離が長くなります。打球に追いついても内野安打になってしまっては意味がありません。菊池選手は捕るまでの時間と送球距離を補えるだけの肩の強さがあるからこそ、通常よりも後ろに守ることができるのです。
そんなすごい守備力の菊池選手ですが、20年オフにメジャー挑戦を目指した際には、残念ながらどこの球団からもメジャー契約のオファーがなく、日本にとどまりました。
メジャーでは二塁手は守備よりも打撃、とりわけ長打が求められるので、それにマッチしなかったためだと言われています。代理人は二塁だけでなくショートや三塁も守れるユーティリティープレイヤーであるとして売り込みましたが、プロでの実績がないため相手にされませんでした。
またメジャーの球場は、人工芝よりも打球の勢いが弱まる天然芝のため、極端に後ろに守る菊池選手では当たりそこないの内野安打が増えると懸念されたのではないかとも考えられます。
いずれにせよあれほどの選手が30もあるメジャー球団のどこからも見向きもされなかったのは悔しい気持ちです。オリンピックで世界を相手に活躍し見返して欲しいところでしたが、これも全然ダメでした。日本に残ったのは正解だったかもしれません。
内野手の守備位置プロット
さて、今回は内野手の各ポジションでどのくらい求められる肩の強さが異なるのか、検証をしてみたいと思います。そのための一つの方法として、内野ゴロを一塁送球でアウトにする場合の、ボールの飛んでいく距離を各ポジションごとに計算しどれぐらい違うのか見てみます。
当然ながら内野手の守備位置は、状況により変わります。打者の右左、予想される打球の速さと走力との兼ね合い、ゲッツー狙いかバックホーム狙いか、などなど細かく上げればきりがないほどです。
今回は典型的な例として、冒頭の写真の守備位置を参考にしました。以前Excelで作図した野球場に内野手の守備位置をプロットすると以下のようです。
一塁手(1B)と三塁手(3B)の守備位置はベースよりも少し後ろです。二塁手(2B)とショート(SS)はインフィールドラインのあたりです。
内野ゴロのボール移動距離、計算結果
上記の守備位置に基づき、ホームから守備位置まで打球が飛んでいく距離rおよび、内野手が一塁まで送球する距離Lを、2次元座標から計算します。
rおよびLが大きいほど打ってから一塁にボールが届くまで時間がかかるため、より肩の強さが求められることになります。
実際には内野手は守備位置からいくらか動いで打球を捕球し、捕球位置からステップを踏んで投げますが、ここでは簡易的に守備位置まで打球が飛び、守備位置から送球を開始するとします。
計算結果を上記の図に書き込んだものが、以下です。
ポジションごとのボール移動距離
ショートvs三塁手
ショートvs二塁手
二塁手はショートと同じぐらい深い位置に守ります。どちらもインフィールドライン当たりです。そのため打球の飛んでくる距離rは同程度です。ショートは二塁手に比べ、送球距離がずっと長いため、捕球までの時間は同程度でも、より肩の強さが求められます。
ショートvs一塁手
では、また。
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