2021年11月20日土曜日

第95回 内野で一番肩の強さが必要なポジョションはどこか?

守備位置(actual) 


遊撃手最強説

内野手4つのポジョションのうち、最も肩の強さが求められるのはどこでしょうか?

一般的に一塁手と三塁手は守備力の優先度が低く、体が大きく長が力があるががその分動きが鈍重なパワーヒッターが起用されます。

二塁手、遊撃手は守備の上手い選手が起用されます。特にショートはチーム内でも最も守備力の優れた選手が努める花形のポジションで、セカンドよりも肩の強さが求められます。

三遊間の深い位置で逆シングルからのジャンピングスローなどはまさに見せ場です。



154km/hの遊撃手

ソフトバンクの今宮選手は高校時代にMAX154km/hを記録した剛球投手でしたが、プロ入り後は最初から野手に専念しました。もったいないと当時は思いましたが、この判断は正解でした。

ショートとしてその強肩を活かすことで、選手層がどこよりも厚いソフトバンクでレギュラーを奪い、ゴールデングラブ賞を5回も受賞しました。


MLBが欲しがらない二塁手

二塁手でも肩の強い選手はいます。

ゴールデングラブ賞8回受賞の広島カープ菊池選手は大学時代までショートでしたが、プロ入りに後にチーム事情で二塁手にコンバートされ、これがはまりました。

菊池選手は守備範囲がとても広く、打った瞬間ヒットだと思われる打球でもことごとく追いついてしまいます。

なぜ菊池選手が他の選手では追いつけないような打球まで追いつくことができるかというと、普通の守備位置よりも後ろに守っているからです。テレビ中継ではあまり映らないので分かりづらいですが、球場で見るとそんなとこにいるのかと思うくらい後ろに守っています。普通の守備位置はインフィールドラインより少し前ぐらいですが、菊池選手はラインの後ろ1,2メートルの位置にいます。

だから他の選手ももっと後ろに守れば、より多くの打球に追いつけるようになります。

問題はそこからです。後ろに守ればそれだけ打ってから打球を捕るまでの時間が長くなり、また一塁までの送球距離が長くなります。打球に追いついても内野安打になってしまっては意味がありません。菊池選手は捕るまでの時間と送球距離を補えるだけの肩の強さがあるからこそ、通常よりも後ろに守ることができるのです。


そんなすごい守備力の菊池選手ですが、20年オフにメジャー挑戦を目指した際には、残念ながらどこの球団からもメジャー契約のオファーがなく、日本にとどまりました。

メジャーでは二塁手は守備よりも打撃、とりわけ長打が求められるので、それにマッチしなかったためだと言われています。代理人は二塁だけでなくショートや三塁も守れるユーティリティープレイヤーであるとして売り込みましたが、プロでの実績がないため相手にされませんでした。

またメジャーの球場は、人工芝よりも打球の勢いが弱まる天然芝のため、極端に後ろに守る菊池選手では当たりそこないの内野安打が増えると懸念されたのではないかとも考えられます。

いずれにせよあれほどの選手が30もあるメジャー球団のどこからも見向きもされなかったのは悔しい気持ちです。オリンピックで世界を相手に活躍し見返して欲しいところでしたが、これも全然ダメでした。日本に残ったのは正解だったかもしれません。


内野手の守備位置プロット

さて、今回は内野手の各ポジションでどのくらい求められる肩の強さが異なるのか、検証をしてみたいと思います。そのための一つの方法として、内野ゴロを一塁送球でアウトにする場合の、ボールの飛んでいく距離を各ポジションごとに計算しどれぐらい違うのか見てみます。


当然ながら内野手の守備位置は、状況により変わります。打者の右左、予想される打球の速さと走力との兼ね合い、ゲッツー狙いかバックホーム狙いか、などなど細かく上げればきりがないほどです。

今回は典型的な例として、冒頭の写真の守備位置を参考にしました。以前Excelで作図した野球場に内野手の守備位置をプロットすると以下のようです。

内野守備位置(assumed)

一塁手(1B)と三塁手(3B)の守備位置はベースよりも少し後ろです。二塁手(2B)とショート(SS)はインフィールドラインのあたりです。


内野ゴロのボール移動距離、計算結果

上記の守備位置に基づき、ホームから守備位置まで打球が飛んでいく距離rおよび、内野手が一塁まで送球する距離Lを、2次元座標から計算します。

rおよびLが大きいほど打ってから一塁にボールが届くまで時間がかかるため、より肩の強さが求められることになります。

実際には内野手は守備位置からいくらか動いで打球を捕球し、捕球位置からステップを踏んで投げますが、ここでは簡易的に守備位置まで打球が飛び、守備位置から送球を開始するとします。


計算結果を上記の図に書き込んだものが、以下です。




ポジションごとのボール移動距離

上図はごちゃごちゃしてしまったので、各ポジションごとのボール移動距離を棒グラフにしました。下の灰色が打球が飛んで来る距離r、上の黒が送球距離Lです。r+Lの、棒グラフが高いほど、ボールの移動距離が長く、より肩の強さが求められるポジションということになります。

内野ゴロ、ポジション別ボール移動距離


ショートvs三塁手

ショートから一塁への送球距離Lは、全ポジション中最も長く41.6メートルです。
一方、三塁からは39.1メートルで、ショートより2.5メートルだけ短くなっています。ショートから一塁への送球距離は、三塁からとそれほど大きく変わらない、ということが分かりました。
どちらもダイヤモンドの対角線より少し長い距離で、強い肩が必要です。

差が大きいのは、打球の飛んでくる距離rです。ホームから守備位置まで、打球が飛んで来る距離はショートが45メートル、三塁手はその約2/3の32メートルです。ホームからより遠いショートは打球が届き捕球するまでの時間が長く、その間に打者ランナーは一塁に向かって長い距離を走れてしまうため、送球のために残された時間の猶予が短くなります。
これを取り返すためには球速の速い送球が必要となります。

また三遊間への当たりの場合、三塁手は捕球のために走ってきた方向へそのまま投げるため、勢いがついており投げやすい体勢です。対してショートは走ってきた方と逆へ投げるため、踏ん張って体の勢いを止めてから投げるか、あるいはジャンピングスローで下半身の力を使わずに投げるかしなければなりません。とってから投げるまでの時間はより長くかかり、球速も遅くなります。この捕球した時の体勢の悪さが、ショートのスローイングをより難しいものにしています。悪い体勢からでもそれなりの送球を投げるためには、地肩の強さが必要となります。

かつては三遊間の打球は、正面に入り捕球するのが基本とされていました。そうすれば例えはじいた時でも体に当てて前に落とせるからです。しかしそれで一塁に間に合わないなら外野に抜けていっても、ホームに帰るランナーがいないときなら同じ結果です。
ならば一塁に投げやすく間に合う可能性の高い逆シングルの方がよいという考え方に近年変わってきています。正面に入る方が誠実で一生懸命な印象を受けますが、実際には逆シングルの方が合理的でよい結果に繋がりやすいのです。

ショートは三塁手に比べ、送球距離は少し長い程度だが、捕球までの時間が長く、また捕球時の体勢が悪いため、より肩の強さが求められます。




ショートvs二塁手

二塁手はショートと同じぐらい深い位置に守ります。どちらもインフィールドライン当たりです。そのため打球の飛んでくる距離rは同程度です。

違いは送球距離Lのみで、これはショートの41.6メートルに対し、二塁手は25.3メートルとずいぶん短くなっています。ショートがダイヤモンドの対角線よりも長い距離を投げるのに対して、二塁手は塁間よりも短い距離しか投げなくてよいのです。

ショートは二塁手に比べ、送球距離がずっと長いため、捕球までの時間は同程度でも、より肩の強さが求められます。



ショートvs一塁手

一塁手は改めて比べるまでもありませんが、打球の飛んでくる距離r、送球距離Lともにショートよりもずっと短くなっています。

先の棒グラフの高さはショートの半分ほどです。
ショートゴロでは打ってから一塁手が送球を捕るまでにボールは86.6メートル(=45+41.6)の距離を移動します。一方、一塁ゴロでは45メートル(=35+10)しか移動しません。




というわけで、やはりショートが最も肩の強さが求められるポジションである、という結果になりました。





では、また。







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