フリーキックと野球のカーブ
サッカーの直接フリーキックでは、壁やキーパーをかわす目的で、ボールの軌道を曲げます。概算で見積もってみます。
フリーキックの軌道計算
ゴールラインから20メートル離れた地点から、ゴール左上を狙うとします。
野球のカーブは120km/h、毎分2700回転でCD=0.43、CL=0.27、回転軸は完全なサイドスピンからトップスピンとジャイロ回転が45度ずつ混じった斜めの方向とします。右打者のアウトローを狙うとします。
サッカーのPKは野球の投球よりも近距離から蹴られます。
ゴールラインからの距離は11メートルです。野球の18.44メートル、さらにはソフトボールの13.11メートルよりも近くです。
ゴールキーパーは左右どちらに蹴られたか見極める前に、勘で、フライング気味に飛んでいます。そのため時に逆を突かれますが、それも致し方なしで、そうしないと間に合いません。
野球のバッターは例え160km/hの球であっても、インコースかアウトコースかぐらいは見極めてから振り始めます。
PKを止めるキーパーのほうが、野球のバッターよりもより時間的にシビアだと言えます。
PKのボールが蹴られてからゴールインするまでの時間がどのくらい短いのか、軌道シミュレータver3.2で求め投球と比較してみます。
PKの球速はプロレベルの想定で、120km/hとします。ちなみにギネス記録は129km/hです。
抗力係数CDは0.2(*1)とします。無回転(ただしナックルのような変化はしない)として揚力係数CLは0とします。
ゴール左上を狙ったこーすとします。
投球は160km/h,2500rpm、右打者アウトコースへの4シームとします。
両者の軌道計算結果は以下のようになりました。
gif動画(リアルスピード)
gif動画(1/10倍スロー)
静止画
グラフ中の点は0.02秒ごとのボール位置を表します。
蹴ってからゴールインまでの時間は0.371秒です。160km/hの投球がホームベースに到達する時間は0.398秒です。
PKのほうが時間が短いという結果になりました。
実際の成否確率データを調べると、PKの成功率は80%以上、従ってキーパーの阻止率は20%以下です。対して、ストレートの被打率は.247(NPB 21年 救援投手平均値)で、25%ぐらいです。
サッカーでPKを止めることは、野球でストレートを打ち返すよりも難しいということになります。
PKも投球も0.4秒弱です。さらに以前計算した女子ソフトの投球、テニスのサーブがバウンドするまでの時間もそのくらいでした。
対人球技における0.4秒程度のボール移動時間というのは、反応速度や動体視力の限界付近、トップレベルの選手がぎりぎり対応できる時間であり、観客がぎりぎり目で動きを追える時間であり、ゆえに最もスリリングで面白く感じる最小時間なのではないでしょうか。
仮に今後レベルが飛躍的に上がり150km/hのキックや、200km/hの投球が当たり前になってしまったら、きっとつまらなくなるでしょう。そのときは距離を長くし再び0.4秒程度になるようなルール調整がされることでしょう。
それでは、また。
自分の球が何キロくらいでているか気になったことはありませんか?
スピードガンやラプソードなどの機器により球速を計ることができますが、個人でも持っている人は少ないでしょう。
高価な機器がなくても球速がどの程度か知る簡便な方法として、遠投の飛距離があります。
肩の強さの目安として、プロの入団テストでは遠投90メートル以上が一次審査通過の条件の一つになっていたりします。
今回は遠投飛距離から球速を推定できるよう、各球速における最大飛距離を軌道計算で求めます。
[計算条件]
球速をパラメータとして振り、20キロから170キロまで計算します。
回転数は各球速の平均値とします。回転数は球速に比例する傾向があります。
回転軸はプロ右投手の平均的な4シームのものとします。球速の遅い、したがってレベルの高くない選手ほど、シュート成分やジャイロ成分が多く混じる傾向にありますが、球速が遅いほど回転による変化の影響が小さくなるため今回は球速によらず一定としました。
投げ出すときの上向き角度は、各球速で飛距離最大となる角度とします。これは30-40度の範囲で、球速が多きほど角度が小さくなります。
リリースポイントは地上1.5メートルとします。
[計算結果]
各球速での軌道計算結果は、以下のようになりました。
20キロから170キロまで、10キロおきの投擲軌道です。
球速 [km/h] | 遠投最大飛距離 [m] | (参考)ホームベースからの距離 |
---|---|---|
20 | 4 | |
30 | 8 | |
40 | 14 | |
50 | 20 | ピッチャープレート 18.44m |
60 | 27 | 一塁 27.34m |
70 | 36 | 二塁 38.8m |
80 | 45 | インフィールドライン 47.5m |
90 | 54 | |
100 | 64 | |
110 | 74 | |
120 | 85 | レフト守備位(プロ、目安) 80m |
130 | 95 | |
140 | 106 | レフトポール 100m |
150 | 116 | |
160 | 126 | センターフェンス 122m |
170 | 135 | |
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野球経験のない小さな子供や女性の球速は、おおよそ50キロ以下です。
ホームベースとマウンドの中間ぐらいまで、ノーバウンドで届くなら、球速は30キロぐらいです。
マウンドからキャッチャーまでノーバウンド投球できれば、50キロ以上出ています。
試合にでるなら塁間(27.43メートル)をノーバウンドで投げられる肩の強さは欲しいものです。そのためには60キロ以上が必要です。
対角線(38.795メートル)をノーバウンドで投げるには、75キロ以上が必要です。
山なりにならず低い送球をするにはもっと球速が必要です。
ホームベースからセンター方向に向かって投げ、インフィールドラインを超えたら、80キロ以上出ています。
小中高と野球を続けていく中で100キロの大台に達すると、遠投飛距離は64メートルまで伸びます。
100キロというと、プロ投手のイメージでスローボールと思われがちですが、それなりに速いです。実際大人でも100キロ出ない人は大勢います。50メートル走の走路を挟んだ距離でキャッチボールできると考えると、それなりの肩の強さです。
投手で甲子園を目指すなら、ストレートの球速は130キロ以上欲しいところです。130キロは、遠投距離では95メートルが目安になります。
プロ野球の入団テストが行われていたころ、一次審査の遠投では90メートル以上とされることが多かったようです。これをパスするには125キロ以上の球速が必要です。野手でも、プロを目指すなら90メートルは超えたいところです。
またこれだけ飛距離が大きくなると回転の影響も大きくなってきます。シュート回転やジャイロ回転成分が少なく、きれいなバックスピン回転だと飛距離が伸びます。
また風による影響も大きくなります。
プロ投手のストレート平均球速は145キロです。遠投距離に換算すると110メートルになります。プロの投手が本気で遠投をすれば、バッターボックスからレフトスタンドに放り込むことができることになります。
遠投といえば元中日の英智選手が有名です。
ナゴヤドームでホームベースから投げ、122メートル先のセンターフェンスに直撃した一投が衝撃的で、一躍強肩外野手として知れ渡りました。
ドーム球場なので、追い風の助力はありませんでした。完全な自力です。
この時の飛距離を125メートルとすれば、球速は160キロ出ていたことになります。
助走ありとはいえ、すごい肩です。
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あなたの球速は何キロでしたか?
ではまた。