MLBの対策
MLBでは年々増加傾向にある本塁打数を抑制する目的で、今年からボール重量を最大で2.8グラム軽くするそうです。
割合で言うと約2%ほどの重量減少です。
軽いと、空気によりより動かされる
ボールが軽くなったら飛距離がアップしてホームラン数はむしろ増えてしまうするのではないか、と不思議に思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
前回、前々回の繰り返しになりますが、ボールが空気から受ける抗力と揚力はどちらもボールの断面積に比例します。今回ボールの大きさは変わらないため、抗力、揚力の大きさは変わりません。
ボールが受ける加速度は力を重量で割った値になります。
式で書くと明確で分子の抗力または揚力はそのままで、分母の重量が小さくなるので、ボールの加速度は大きくなります。
加速度 = 抗力(or 揚力) / 重量 : 空気中を飛ぶボールの加速度
ボールが軽くなるということは、同じ大きさの力を受けても、慣性が小さくなった分だけ動かされやすくなるということです。その結果、ホームラン数減少が期待されるわけです。
そしてこれは、打球だけでなく投球についても同じです。
軽いボールは抗力により減速しやすくなり、同時に回転による揚力でより曲がりやすくなるのです。
前回の計算では、スライダーの曲り幅が2.2%程大きくなるという結果が得られました。
4シームについてはどうでしょうか?どのくらいホップ量が増加するでしょうか?
軽くなったボールの軌道計算(4シーム)
では、重量が2.8グラム軽くなることで、どれくらい4シームの軌道が変わるのか軌道シミュレータver3.2で計算してみます。
ボールの飛び方の違いのみを見るために、投球の初期条件は2種類のボールで同じとします。ボールが軽くなれば球速や回転数がその分上がるかもしれませんが、それらについては考慮しません。
[計算条件]
MLB投手の4シームを想定し、球速150km/h、回転数2300rpm、回転軸はバックスピンにややシュート成分が混じったものとします。
[計算結果]
同じ条件で投げられた2種類のボールの、軌道計算結果は以下のようになりました。
グラフ上の点は0.02秒ごとの、一番右端のみホームベース上(x=18.44m)における、ボール位置を表しています。
差が小さいので拡大図も追加しましたが、それでもわかりにくいぐらいのわずかな差です。
減速はどうか
トラッキングデータ風プロット
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計算によって予想をしてきましたが、実際にプレーがどう変わるのかは、シーズンが始まってからの楽しみです。
今年も、開幕が待ち遠しいですね。
ではまた。