2021年2月20日土曜日

第56回 2021年MLB球が軽くなり、変化球の曲がり方は変わるのか?

  




MLBのボール変更

MLBでは今年から本塁打数を抑制する目的で、ボール重量が最大2.8グラム軽くなるそうです。

割合で言うと約2%ほどの重量減少です。


軽いと、飛ばなくなり、曲がりが大きくなる

ボールが軽くなったら飛距離がアップしてホームラン数はむしろ増えてしまうするのではないか、と不思議に思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

ボールが受ける空気抵抗(抗力)は断面積に比例します。今回ボールの大きさは変わらないため、断面積も変わらず、抗力の大きさは変わりません。

ボールが受ける加速度は力を重量で割った値になります。

式で書くと明確で分子の抗力はそのままで、分母の重量が小さくなるので、ボールの加速度は大きくなります。


加速度 = 抗力 / 重量 : 空気中を飛ぶボールの減速度


つまり、ボールは大きさがそのままで軽くなると、減速が大きくなるので飛距離が減るのです。その結果、ホームラン数減少が期待されるわけです。


そしてこれは、ボールを曲げる揚力(マグナス力)についても同じです。


加速度 = 揚力 / 重量 : 空気中を飛ぶボールの揚力による加速度


ボールが軽くなると分母が小さくなり、加速度が大きくなりよく曲がるわけです。

ピンポン玉は大きさのわりに軽いのでよく曲がりますが、中身をぎっしり詰めてしまえば曲がらなくなります。 


軽くなったボールの軌道計算

では、実際重量が2.8グラム軽くなることで、どれくらい変化球の曲がり方が変わるのか軌道シミュレータver3.2で計算してみます。

ボールの飛び方の違いのみを見るために、投球の初期条件は2種類のボールで同じとします。ボールが軽くなれば球速や回転数がその分上がるかもしれませんが、それらについては考慮しません。


[計算条件]

MLB投手のスライダーを想定し、球速135km/h、回転数2500rpm、回転軸はサイドスピンとジャイロボールの中間とします。







[計算結果]

同じ条件で投げられた2種類のボールの、軌道計算結果は以下のようになりました。

差が小さいので拡大図も追加しました。



横方向の変化量の差は、わずか9mmとなりました。

この球は従来の20年球の場合で直線軌道に対して40cm横へ変化しているため、ボールの違いによる曲り幅の増加率は2.2%(=0.9/40×100)程です。

ボール一個分(7.4cm)ぐらい変わるのであれば影響もあるのでしょうが、9mm程度ではほとんど違いは感じられなさそうです。

というよりも、投球にあまり影響が出ない範囲にボールの変更をとどめた結果、最大でも2.8グラム、ということになったのでしょう。
ホームラン数抑制が目的なのに、投手が投げ方を変えなければならない程投球軌道に影響が出ては逆効果になりかねませんからね。





ではまた。





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