気圧の違い
クアーズ・フィールドという球場を知っていますか?日本では野茂英雄投手が2度目のノーヒットノーランを達成した舞台として有名です。
もう一つMLB本拠地の中で最もよく点が入るバッター有利な球場としても有名で、それゆえ野茂投手の偉業は米国でも驚きを持って報じられました。
この球場がバッター有利である理由として、標高1600mとかなり高い場所にあり、そのため「気圧が低いのでボールがよく飛ぶ」ということが言われています。
ところで、気圧のせいでボールが飛ぶと噂されている球場は、日本にもあります。
東京ドームです。
天井を膨らませるために外よりも0.3%気圧を高くしてあり、「気圧が高いのでボールがよく飛ぶ」と言うわけです。
クアーズフィールドでは「気圧が低いから飛ぶと」言われ、東京ドームは「気圧が高いから飛ぶと」言われている。
矛盾しているのでどちらかあるいは両方が間違っているのでしょう。
そこで、今回は打球の軌道計算をして気圧の違いにより打球の飛距離がどれくらい変わるのか計算し、本当に東京ドームは気圧のせいで打球が飛ぶのか検証してみます。
気圧が飛距離に影響する理由
気圧が打球飛距離に影響する理由は、以下のようです。・気圧Pが上がると、空気密度ρが上がる
・ボールが空気から受ける力(抗力D、揚力L)は、空気密度ρに比例する。
⇒そのためボールが空気から受ける力(抗力D、揚力L)は、気圧Pによって変化する。
気圧Pの違いにより、抗力と揚力が大きく変わるのであれば打球の飛び方も変わってきます。
また、抗力が下がれば抵抗が減り飛距離が増えますが、揚力が下がればバックスピン回転で上に浮き上がろうとする力が弱くなり、早く地面に落ちるようになるため、飛距離が低下します。
抗力と揚力、どちらの変化の影響が大きいかによっても打球の飛び方が変わってきます。
気圧と空気密度
気圧P気圧は高度ゼロメートルではP=1atmです。
高度が上がる程気圧は下がり、クアーズフィールドのある標高1600mではP=0.833atmまで下がります。
一方、東京ドームでは0.3%高めてあるので、P=1.003atmです。
空気密度ρ
気圧Pが変わると、空気密度ρが変わります。
気圧が高いと空気が圧縮されるので空気密度が上がるわけです。
空気密度は以下の式で計算されます。
ρ=1.293×P/(1+T/273.15)
ここでTは気温で、今回は20度で一定とします。
この式で計算すると空気密度は以下のようになります。
標準 :ρ=1.293×1/(1+20/273.15)=1.205 [kg/m^3]
クアーズフィールド:ρ=1.293×0.8333/(1+20/273.15)=1.003 [kg/m^3]
東京ドーム :ρ=1.293×1.0003/(1+20/273.15)=1.208 [kg/m^3]
・クアーズフィールドの空気密度は、標準大気より17%低い。
・東京ドームの空気密度は、標準大気より0.2%高い
打球速度は140km/h、回転数は2500rpmで完全なバックスピンとします。
rpmは一分間あたり回転数の単位で、2500rpmだと平均的なプロ投手の4シームより少し多めぐらいです。
これらの条件を一定にして、上記で計算した空気密度だけを変えて計算します。
[計算条件]
バックスピン
球速:v0=140[km/h]、打球角度:θ=30度(上向き)
ミートポイント x0=0m(前方)、z0=1.0m(高さ)
ボール回転軸角度 θs=90度、Φs=-90度
抗力係数 CD=0.41、揚力係数CL=0.22
空気密度 ρ=1.205, 1.003, 1.208 [kg/m^3]
[計算結果]
各球場の気圧における空気密度で計算した、打球軌道は以下のようになりました。
・クアーズフィールドでは、5.2m飛距離が増える
・東京ドームでは、飛距離は変わらない
・気圧が下がると、飛距離は伸びる
打球軌道計算
それでは、打球の軌道計算を行います。打球速度は140km/h、回転数は2500rpmで完全なバックスピンとします。
rpmは一分間あたり回転数の単位で、2500rpmだと平均的なプロ投手の4シームより少し多めぐらいです。
これらの条件を一定にして、上記で計算した空気密度だけを変えて計算します。
[計算条件]
バックスピン
球速:v0=140[km/h]、打球角度:θ=30度(上向き)
ミートポイント x0=0m(前方)、z0=1.0m(高さ)
ボール回転軸角度 θs=90度、Φs=-90度
抗力係数 CD=0.41、揚力係数CL=0.22
空気密度 ρ=1.205, 1.003, 1.208 [kg/m^3]
[計算結果]
各球場の気圧における空気密度で計算した、打球軌道は以下のようになりました。
・クアーズフィールドでは、5.2m飛距離が増える
・東京ドームでは、飛距離は変わらない
・気圧が下がると、飛距離は伸びる
やはり飛ぶ球場だった
気圧差により、クアーズフィールドでは空気密度が標準よりも17%も小さくなります。空気密度が低いということは、空気が薄いということです。
飛翔中ボールにぶつかってくる空気分子の数がそれだけ、少なくなるので空気抵抗が減ることになります。
そのため、今回の計算において飛距離が5.2m、率にして5.1%ほど伸びました。
一方でバックスピン回転による揚力も減るため、頂点の高さが標準より低くなっていますが、その差はわずか40cm程であり、飛距離には対して影響を与えないようです。
クアーズフィールでは気圧が低いことにより打球飛距離がアップするというのは本当、でした。
一番狭い左翼フェンスまでで、105.8mもあります。普通の球場なら100mです。
今回計算した打球軌道では、標準の打球は100m地点のフェンスを、クアーズフィールドの打球では105.8m地点のフェンスを、どちらもぎりぎり越えてホームランになります。
ホームランの出やすさに対してはちゃんと調整がなされているようです。
とはいえ、外野のフェアゾーンが広がればそれだけヒットになる確率は上がるので、やはり打者有利のバッターズパークであることは変わらないようです。
クアーズフィールでは気圧が低いことにより打球飛距離がアップするというのは本当、でした。
調整済み
標高のせいで飛距離が伸びるというのは、球場を設計した人達も事前に理解していたようで、クアーズフィールドは少し広めに作られています。一番狭い左翼フェンスまでで、105.8mもあります。普通の球場なら100mです。
今回計算した打球軌道では、標準の打球は100m地点のフェンスを、クアーズフィールドの打球では105.8m地点のフェンスを、どちらもぎりぎり越えてホームランになります。
ホームランの出やすさに対してはちゃんと調整がなされているようです。
とはいえ、外野のフェアゾーンが広がればそれだけヒットになる確率は上がるので、やはり打者有利のバッターズパークであることは変わらないようです。
気圧が高いから、は迷信
一方、東京ドームに関しては飛距離は全く増えていません。むしろほんのわずか、9cmほど飛距離がは落ちているくらいです。
気圧が上がっても飛距離は増加しない、ということが分かりました。
東京ドームでホームランが出やすい理由として「気圧が高いから」というのは完全な迷信です。
その一つは明らかで左中間、右中間の狭さです。
東京ドームは上から見ると四角くなっており左中間、右中間のふくらみがほとんどありません。
そのため、ポール際でなくてもホームランを量産することができます。
もう一つには、空調疑惑があります。
実際に試合で守ったことある大島選手(中日)が生放送ゲスト解説によばれたときに「東京ドームは、巨人の攻撃のときだけ、センター方向に追い風が吹く」と証言し、日テレアナウンサーと他の解説者を凍り付かせていました。
気圧が上がっても飛距離は増加しない、ということが分かりました。
東京ドームでホームランが出やすい理由として「気圧が高いから」というのは完全な迷信です。
別の理由がある
それでも実際にホームラン発生率が他球場よりも高いのであれば、それは単にアンチのひがみではなく、何かしら理由があるはずです。その一つは明らかで左中間、右中間の狭さです。
東京ドームは上から見ると四角くなっており左中間、右中間のふくらみがほとんどありません。
そのため、ポール際でなくてもホームランを量産することができます。
もう一つには、空調疑惑があります。
実際に試合で守ったことある大島選手(中日)が生放送ゲスト解説によばれたときに「東京ドームは、巨人の攻撃のときだけ、センター方向に追い風が吹く」と証言し、日テレアナウンサーと他の解説者を凍り付かせていました。
それは、滑ってしまったつまらないジョークだったのかもしれません。
それは、球界の未来を思った命がけの告発だったのかもしれまん。
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