メジャー挑戦
平均的ストレート
前田健太投手4シームの軌道計算
トラッキングデータでは変化量に加え、初速と回転数も測定されています。これら3つのデータから、軌道シミュレータver3.2により投球軌道を計算し再現することができます。
今回は前田投手の4シームについて、トラッキングデータの初速と回転数をインプットとして計算した結果がトラッキングデータの変化量と一致するよう、回転軸の値を調整します。
[トラッキングデータ]
2019年シーズンの平均値です。
[計算条件]
軌道シミュレータver3.2へのインプット値は以下のようです。
[計算結果]
計算された4シームの軌道は以下のようになりました。
図中の点は0.02秒ごとの、一番右はホームベース前端上(x=18.01m)におけるボール位置です。
灰色線は同じ球速の自由落下軌道で、これとの差が先のトラッキンデータにおける変化量となります。
4シームの特徴
前田投手の4シームは、目立った特徴がありません。
トラッキンデータとして測定される、バックスピン回転の上向き揚力(マグナス力)によるホップ量は、39cmとMLB平均程度です。
横方向の変化量も17cmと、いたって普通です。大きくシュートせず、かといって真っスラのように全くシュートしないわけでもありません。
球速も平均を上回るものではありません。
全てが平均的なので、メジャーリーグの投手はどんな感じのストレートを投げているの、と聞いてくる人がいたら、こんな感じだよ、と見せてあげるのにちょうどよい見本になります。
もちろんこれは前田投手のストレートが大したことないというわけではなく、メジャーリーグ全体のレベルがそれほどに高いということです。
2013年、王選手の記録が目前に迫ったバレンティン選手が、前田投手の高めボールゾーンへ投じた渾身のストレートをレフトスタンドへ54号を叩き込んだ一撃は、とても衝撃的でした。バレンティンは当然、翌年はメジャーに行ってしまうものと思われていましたが、結局オファーがなく、当時とても不思議でした。メジャーのスカウトたちからは普通の球を打っただけ、と思われてしまったのかもしれません。
3Dプロット
おまけの、3D動画です。
今回計算した投球軌道をCADソフトでプロットし、gif動画にしました。
スピードは実際と同じにしてあります。こうしてみると、やはり速いです。
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他の球種についても、また再現計算を行っていきたいと思います。
次回はスライダーの予定です。
では、また。
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