2021年9月18日土曜日

第86回 前田健太投手のチェンジアップ軌道を、トラッキングデータから再現する

 ツインズ



渡米後に習得    


前田健太投手の一番の武器である球種が、チェンジアップです。

4シーム、スライダーも良い球を投げますが、メジャーで生き残るために更なる進化を求め、渡米後に習得した球です。
納得のいくフォークボールが投げられず、代りの落ちる球として使えるよう試行錯誤をした結果、現在の浅いフォークボールの握りから薬指を中指の横に沿えたような形になったそうです。

この落ちるチェンジアップは空振り率、ゴロ率ともに高く、現地の格付けでも非常に高い評価を受けています。

今回は、前田投手の落ちるチェンジアップの投球軌道をトラッキングデータから再現計算してみます。



前田投手チェンジアップの軌道計算


トラッキングデータでは変化量に加え、初速と回転数も測定されています。これら3つのデータから、軌道シミュレータver3.2により投球軌道を計算し再現することができます。

今回は前田投手のチェンジアップについて、トラッキングデータの初速と回転数をインプットとして計算した結果がトラッキングデータの変化量と一致するよう、回転軸の値を調整します。


[トラッキングデータ]

2019年シーズンの平均値です。


[計算条件]

軌道シミュレータver3.2へのインプットは以下のようです。








[計算結果]

計算されたチェンジアップの軌道は以下のようになりました。

図中の点は0.02秒ごとの、一番右はホームベース前端上(x=18.01m)におけるボール位置です。

灰色線は同じ球速の自由落下軌道で、これとの差が先のトラッキンデータにおける変化量となります。







チェンジアップの特徴

前田投手のチェンジアップの上下方向の軌道は、自由落下に近いほど大きく落ちています。

また、横の変化量が32cmと、回転数の少なさの割に大きいのが特徴です。ホームベース幅の半分よりも大きな変化で、ど真ん中に向かって投げだされた球がボールゾーンまで曲がっていきます。日本であればチェンジアップというよりも、シンカーに分類されるような球です。

これは回転軸がほぼシュート方向のサイドスピン回転で、ジャイロ回転成分が少ないためです。投げるときに人差し指で押し込むようにして投げているそうで、これがサイドスピン回転をあたえるコツのようです。





4シームとの比較

同じ角度でリリースされた、前々回に計算した4シームと比べると以下のようです。



縦の差が43cm、横の差が15cmです。

縦の落差が非常に大きくなっています。タイミングをずらすようなチェンジアップというよりも、フォークボールのように落差で空振りをとるタイプの球です。

横方向は曲がる方向が4シームと同じため、差は小さいですがそれでもボール2個分ほどの違いがあります。左バッターからするとアウトコースいっぱいの球だと思って振りに行くとボールゾーンに逃げて空振りをし、右バッターだとボールの上っ面を打って脚に自打球を当ててしまうような厄介な軌道です。





3Dプロット

おまけの、3D動画です。

上記で計算した投球軌道をCADソフトでプロットし、gif動画にしました。

スピードは実際と同じにしてあります。

同じリリース角度での4シームと、チェンジアップが交互に投げられます。




インハイの4シームと同じ角度でリリースされた球が、低目のボールゾーンへ曲がり落ちてきます。
左右どちらの打者にとっても打ちにくそうな球です。



*****

次回は、カーブの再現計算をする予定です。








では、また。




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