高速左腕
(*1)日刊スポーツ 2021年11月11日
江夏超え
菊池雄星投手4シームの軌道計算
今回は菊池投手の4シームについて、トラッキングデータの初速と回転数をインプットとして計算した結果がトラッキングデータの変化量と一致するよう、回転軸の値を調整します。また菊池投手の4シームは回転数と球速の割合に対して変化量が大きいため、変化量に合うよう揚力係数をいつもよりも少し大きめの値を使用します。
[トラッキングデータ]
2021年シーズン前半(開幕から7月1日までの好調期間)の平均値です。
[計算条件]
軌道シミュレータver3.2へのインプット値は以下のようです。
球速:v0=154[km/h], 抗力係数:CD=0.40, 揚力係数:CL=0.21リリースポイント:(xo,yo,zo)=(2.03,0.66,1.75)[m]リリース角度:上向き:θ=-2.0[度], Φ=-2.5[度]ボール回転軸:z軸→x軸 : θs=65[度], Φs=-90[度]
投手方向から見た回転軸 |
[計算結果]
計算された4シームの軌道は以下のようになりました。
図中の点は0.02秒ごとの、一番右はホームベース前端上(x=18.01m)におけるボール位置です。
灰色線は同じ球速の自由落下軌道で、これとの差が先のトラッキンデータにおける変化量となります。
4シームの特徴
菊池投手の4シームは球速、ホップ量ともにMLB平均よりも大きく、さらにリリースポイントが前よりで全てにおいて優れています。カットボールを多く投げるため、4シームの投球割合は32%で、およそ3球に1球ぐらいの頻度でしか投げないのがもったいないくらいです。
また左投手のためリリースポイントおよびシュートして曲がる方向が右投手とは左右反転した逆で、センターラインに対して鏡面対称のようになります。一塁ベース側よりでリリースされた球が左バッターボックスの方へ向かって曲がっていきます。右投手と左右逆になるのは当たり前のことですが、右投手の軌道に慣れている打者にとってはこれだけでもずいぶん打ちづらくなります。左投手はほとんどが生まれつき左利きの人に限られており、左打者やあるいはボクシングの左構えのように右利きの人がトレーニングをして後天的に身に着けて高いレベルの試合で通用するようになるということはまずありません。
左投手は天然物しか存在しない、とても貴重な存在です。3Dプロット
今回計算した投球軌道を3D CADソフトでプロットし、gif動画にしました。
スピードは実際と同じにしてあります。反りながらホップしてくるような軌道で、右打者からするとどうやってもボールの下を振ってしまいそうな感じがします。
では、また。
0 件のコメント:
コメントを投稿