1.6%の回転
動いているボールは運動エネルギーを持っています。
160km/hの球で計算すると、
E1 = 1/2・m・v^2 = 1/2×0.145×(160/3.6)^2 = 143.5 [J]
(m:ボール重量、v:球速)
143.5J(ジュール)です。
これは重心の並進運動エネルギーです。
ボールが回転していれば、重心回りの回転運動エネルギーも加わります。
一分間に2300回転の球で計算すると、
E2 = 1/2・I・ω^2 = 1/2・(2/5・m・(d/2)^2) ・(2π・N/60)^2
= 1/2× { 2/5×0.145×(0.074/2)^2} × (2×3.14×2300/60)^2 = 2.3[J]
(I:慣性モーメント(一様密度の球を仮定)、d:ボール直径、N:回転数)
2.3Jです。
並進よりもずっと小さい値です。
トータルで145.8J(=143.5+2.3)で、回転エネルギーそのうちの1.6%にすぎません。(2.3/145.8=0.016)
回転エネルギーが小さいのは回転中心近くは速度が遅く、また一番速い外表面でも32km/hにすぎないためです。(d/2×ω= 0.074/2×(2π×2300/60)×3.6=32)
ジュールとカロリー
J(ジュール)は、SI単位系におけるエネルギー単位です。
定義は「1ニュートンの力でその方向に 1メートル動かすときの仕事」です。
日常生活においてはあまり使われません。
カロリーのほうがなじみがあります。
私たち人間が、食物から摂取したり、運動で消費するエネルギーは主にkcal(キロカロリー)で表されます。
1カロリーは「水 1gの温度を1 °C上昇させる熱量」で、1キロカロリーはこの1000倍です。
ジュールとカロリーの関係は「1 cal = 4.184 J 」です。
160km/hの熱量
160km/hのボールが持つ運動エネルギーがすべて水の熱量に変換されたら、どのくらい温度が上がるでしょうか。
160km/hのエネルギーは上述のように146Jで、これは35calの熱量と等価です。(146/4.184=35)
200ccの水ならば、わずかに0.2度温度が上昇します。(35/200=0.17)観客は沸いてもカップのお湯は沸きません。
ナイアガラの熱量
滝の水は高いところから落ちて力学的な位置エネルギーを熱エネルギーに変換しますが、水温の上昇はわずかです。(*1)創元ヴィジュアル科学シリーズ2 シュレディンガーの猫 -実験でたどる物理学の歴史
アダム・ハート=ディヴィス著 山崎正浩訳 創元社 2017年出版
消費カロリー
投手がボールを1球投げるごとに、どのくらいのエネルギーが消費されているでしょうか。
投球の運動強度を6METsとし、体重100kgの投手が、3時間の試合の半分1.5時間で、100球を投げると仮定します。
そのとき1球投げるごとに投手が消費するカロリーは、9.5kcalとなります。(6×100×1.5×1.05/100=9.45)
ここで、METs × 体重(kg) × 時間 × 1.05 = 消費カロリー(kcal)です。
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