2023年5月20日土曜日

第147回 サッカーボールの軌道計算③ ゴールキック vs 野球のホームラン

 

ゴールキックと野球のホームラン

サッカーのゴールキックは途中で相手選手に触られないよう、できる限り遠くまでノーバウンドで飛ばすように蹴ります。

Jリーグのプロ選手の場合、ハーフウェイラインを余裕で飛び越し相手陣地まで達します。

しかし、それでも野球のホームランほどの飛距離はでません。

日本代表選手がキックベースをとんねるずの番組で横浜スタジアムで行った際は、フルパワーで蹴ってようやく茶色のエリアの後ろぐらいまでの飛距離でした。



空気抵抗の違い

サッカーボールのほうが飛距離が出ないのは、野球ボールよりも空気抵抗による減速が大きいことが主な要因です。Jリーグ選手の身体能力がプロ野球選手よりも劣るわけではありません。

空気抵抗による減速が大きいのはサッカーボールの方が野球ボールに比べ、大きさのわりに軽いためです。

ボールが空気から受ける抗力Dは下式で表されます。

        (A:断面積、ρ:空気密度、v:球速、CD:抗力係数)

概算してみます。

サッカーボールの直径は野球ボールの3倍ほどなので、断面積Aはその2乗で9倍ほどになります。
サッカーボールの抗力係数CDは野球の1/2倍ほどです。(*1)
従って同じ球速の場合、サッカーボールのほうが4.5倍(=9/2)強い抗力を受けます。

抗力を重量で割った値が、加速度になります。
サッカーボールの重量は野球の3倍ほどです。
従って同じ球速の場合、サッカーボールのほうが野球ボールよりも1.5倍(=4.5/3)大きく減速します。


    参考webサイト
    (*1) https://gigazine.net/news/20140619-magnus-effect-world-cup-ball/
    (*2) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvs1990/24/93/24_93_104/_pdf


ゴールキックの軌道計算

サッカーのゴールキックと、野球のホームランでどのくらい飛距離が違うのか軌道計算してみます。

ゴールキックの球速は120km/hとします。
抗力係数はCD=0.2,揚力係数は毎秒4回転のバックスピンでCL=0.07(*2)とします。
ゴールラインの5.5メートル前にあるゴールエリア端から、上向き30度で蹴り出されるとします。

野球のホームランは150km/h、毎分2500回転のバックスピンでCD=0.41、CL=0.21、上向き30度で打ち出されるとします。

計算結果は以下のようになりました。

ゴールキックの軌道計算

サッカーのゴールキックは77メートル地点までノーバウンドで飛ぶ、という結果になりました。
50メートル地点のハーフウェイラインを軽々超え、ワンバウンドで100メートル地点の相手ゴール目前までいって、フォワードがうまくやればその球を直接シュートして決めることもできそうです。

それでも野球のホームランに比べると全然です。

Jリーグのゴールキーパーが野球場にやってきて、ホームベースにサッカーボールを置いて、思い切り蹴っても外野フェンスを越えることはできません。普通の外野フライ程度です。

NPBのパワーヒッターがサッカー場のゴール前でフリーバッティングをしたら、打球は相手ゴールの遥か上を飛び越していきます。

ボールの飛距離に関しては野球に軍配が上がります。






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