投げおろすストレートで100セーブ達成
中日の守護神ライデルマルティネス投手は今シーズン通算100セーブを達成し、さらにここまで防御率0.00の成績を残しています。
各球団ともクローザーはすごい投手ばかりですが、その中でもさらに飛びぬけています。
彼の一番の武器は何といっても、「角度のあるストレート」です。
常時150km/h後半、最速161km/hの球速だけでも十分な脅威ですが、さらに長身を活かした高いリリースポイントから投げおろしてくることで角度がついた球筋になっており、それが打者の打ちにくさを増加させています。
身長は関係ない
身長が高い投手はみな高い位置でボールをリリースしているかというと、そうでもないようです。
MLB投手のリリースポイントの高低は、投手の身長と相関がないそうです。(*1)
参考Webサイト(*1)note https://note.com/student_report/n/n216be3ca7ff9
確かにそういわれてみると、ストレートに威力のある投手の中には、沈み込むような投球フォームで低いリリースポイントから浮き上がるような軌道で投げるタイプの投手もいます。
ライマルと火の玉
下はライデルマルティネス投手と、元阪神の藤川球児投手の投球フォームのスケッチです。
Rマルティネス投手の身長は193cm、藤川投手は185cmと差があり、またスケッチ図の比率も少しずれがあるかもしれませんが、それを考えてもリリースポイントの高さの違いは一目瞭然です。
MLB時代2015年のトラッキングデータによれば、藤川投手のリリースポイント高さは地上163cmです。
身長に比べずいぶん低い位置で投げています。
前がいいか、上がいいか
せっかく高身長なら人より高いところから投げた方が有利な気がしますが、必ずしもそうしていないということです。
なぜでしょうか?
考えられる理由の一つは、前で投げることを優先しているということです。
より前で、より打者寄りでリリースするためにはステップ幅を大きくするのが有効ですが、そうすると腰の位置は自然と低くなります。
前でリリースするタイプの投手の投球フォームを見ると、軸足のすねは地面に付きそうなほどで、踏み出し足の膝は90度近く曲げられています。
つけないといけない
もう一つ考えられるのは、角度をつけなければいけなくなる、ということです。
ストライクゾーンの高さは投手によらず決まっていますから、リリースポイントが高い投手ほどより下に向かって投げ出さなければなりません。
さらに球の速い投手ほど、ボールの飛行時間が短く重力による落下量が小さいため、余計に下向きに投げる必要があります。
下には投げにくい
そもそもピッチャーマウンドが設置されているのは、平地では低い位置にあるストライクゾーンに投げにくいからです。
プロレベルの投手はカーブ以外の球種は基本、全て水平よりも下に向かって投げ出さないと低めのゾーンにいきません。
ブルペンでの投球練習を見ても、はじめは捕手を中腰で立たせた「立ち投げ」から始め、体が温まってきたら座らせて試合同様の球を投げます。
元々、投手は無理をして低く投げているわけです。
リリースポイントを高くすればそれだけ余計に無理をしなければならなくなります。
高いリリースポイントから角度のついた球を投げることは、打者にとって打ちにくいというメリットと共に、投手にとって投げづらいというデメリットが発生する諸刃の剣であると考えられます。
上から投げおろすストレートの軌道計算
さて、高いリリースポイントから投げ下ろすストレートにはどのくらいの角度がついているでしょうか?
軌道計算してみます。
[計算条件]
球速160km/h、回転数2200rpmのストレートとします。
リリースポイントを地上2メートとします。(xo,yo,zo)=(1.8,-0.6,2.0)。
比較対象の低いリリースポイントは地上1.6メートルとし、20cm前であるとします。(xo,yo,zo)=(2.0,-0.6,1.6)。
低めいっぱいのゾーン(x,z)=(18.01,0.5)を狙ったコースとします。
高いリリースポイントでは下向き3.9度で投げ出しています。
低いリリースポイントは2.6度です。
同じ低めに投げ込んだ場合、上から投げ下ろす方が1.3度大きく角度がついています。
高めの軌道計算
藤川投手は低いリリースポイントから高めのゾーンに向かって、浮き上がるようなストレートを投げていました。
高めの球ではどのような軌道になるでしょうか
高めいっぱいのゾーン(x,z)=(18.01,1.1)を狙ったコースも計算してみます。他の条件は先と同じです。
[計算結果2]
結果は以下のようです。x-yプロットは先とほぼ同じのため省略します。
高いリリースポイントでは下向き2度で投げ出しています。
低いリリースポイントは0.7度です。
低めと同様に、1.3度差がついています。
高めに投げるときは低いリリースポイントの方が、打者の目線に近い高さから水平に近い角度で投げ出されるため、よりお辞儀量の少なさが強調されます。
3Dプロット
打者目線からはどのように見えるでしょうか?
右打席からの視点をイメージして3Dプロットしてみました。
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