OPSの低いアベレージヒッター
打者の能力は長打率と出塁率を足し合わせた、OPSで評価されるのが一般的になりました。
この指標は長打率が高い長距離打者に有利な指標です。シングルヒットの多いアベレージヒッターは、打率が悪くなくても長打率が低いためOPSが小さくなります。
OPSが広まるほどアベレージヒッターは低く評価されるようになり、プレースタイルを悪く言われているのを聞くと少し悲しい気持ちになります。
アベレージヒッターを擁護するよい方法はないものでしょうか。
その一案として盗塁が挙げられます。
「シングルヒットでも盗塁をすれば二塁打と同じ」というわけです。
これを考慮してOPSを計算しなおしたらどうなるか、というのが今回のテーマです。
OPSに盗塁を加味する式
以下のような計算式を考えてみました。
長打率=塁打数/打数 → 長打率a=(塁打数+盗塁-盗塁死)/打数
出塁率=出塁/(打数+四死球+犠飛) → 出塁率a=(出塁-盗塁死)/(打数+四死球+犠飛)
OPS=長打率+出塁率 → OPSa =長打率a+出塁率a
盗塁成功したら塁打数が一つ増え、盗塁失敗したら塁打数と出塁数が一つずつ減るとしました。
盗塁成功したらシングルヒットが二塁打になり、盗塁失敗したらシングルヒットが凡打になるとして扱います。
4/5盗塁王
では実際の選手の成績を使って計算してみましょう。
誰が良いでしょうか?
盗塁と言えば、あの選手ですね。
2018年にドラフト1で指名されると、ルーキーイヤーの19年から昨23年までの直近5年間で4度も盗塁王を獲得した阪神タイガース近本選手です。
彼の23年の成績は長打率.429、出塁率.379、OPS.809ともともと十分立派な数字です。
これに盗塁成功28、失敗3を考慮して上記の式で計算しなおしてみます。
結果は、長打率a.479、出塁率a.374、足してOPSaは.853となりさらにアップします。
非常に良いとされるランクBのOPS.833以上に入ってきます。
レッドスター
かつて阪神には近本選手以上のスピードスターがいました。
2001年から05年まで5年連続盗塁王、NPB歴代9位の通算381盗塁を記録した赤星憲広選手です。
星野監督のもと18年ぶりにリーグ優勝した2003年のデータを使って計算します。
元のOPSは.752です。
これは良いとされるランクCのOPS.767以上に少し届かず、並とされるランクDの評価になります。
これに盗塁61、失敗10を加えて計算すると、OPSa.828となります。
大きくアップしてランクBのOPS.833以上に近い値まで上昇します。
レジェンド2人
近本選手を令和の盗塁王とするなら、平成と昭和は誰でしょうか?
平成はMLB通算509盗塁のイチロー選手、昭和はNPB歴代1位の通算盗塁数1065を誇る福本豊選手ですね。(異論はあると思います。)
この2人はどうでしょうか。
イチロー選手をMLB史上最多のシーズン262安打を放った2004年のデータで計算します。
元の値はOPS.869で、ランクBです。
これに盗塁36、失敗11を加えると、OPSa.890となります。
もともとがランクBと高いことと失敗が11と多いのでそれほど上昇しませんでした。
福本豊選手をNPB史上最多のシーズン106盗塁を記録した1972年のデータで計算します。
元の値はOPS.852で、こちらもランクBです。
これに盗塁106、失敗25を加えると、OPSa.977となります。
素晴らしいとされるランクAのOPS.900以上を軽く超えました。
パワーヒッターが得点能力で輝く一方で、アベレージヒッターの俊足もまた、野球の多様性と魅力を形作ります。
MLBのルール改正(ベース拡大&牽制回数制限)により盗塁が増えることで、この魅力はさらに増すことでしょう。
俊足功打の選手たちがダイヤモンドを駆け巡る姿を、これからも楽しみましょう。
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