カーブを多投
プロ野球においてカーブは投球割合が低く、あまり投げられません。
速くて手元で小さく曲がる変化球が主流で、遅くて大きく曲がるカーブは打者が予想していないときに裏をかいて見逃しストライクを取る球として使われます。
多投して狙われてしまうと危険な球です。
そんな中でセ・リーグでもっとも高い投球割合(20.9%(*3))でカーブを投げながら、リーグ2位の被打率(.172)に抑えている中日ドランゴンズの先発左腕、小笠原慎之介投手は球種の多様性を保つうえで貴重な存在です。
彼のカーブは遠く離れた外野席からでもはっきりわかるほど大きく曲がります。
参考動画(*1)によれば、小笠原投手のカーブは59.3cm下に変化しており、これはNPBでソフトバンク・モイネロ投手に次ぐ2番目に大きい値です。
NPB平均の変化量が33.8cmなので2倍弱曲がっていることになります。
軌道計算
小笠原投手のカーブを参考動画(*1)のデータをもとに再現計算してみます。
比較用にNPB平均のカーブも計算しています。
[インプット]
軌道シミュレータへのインプット値は以下のようです。
参考動画(*1)のデータに基づいています。yoなどデータがないものは推定値です。
[計算結果]
特徴2 シュートするカーブ
小笠原投手の横変化量は異質です。
左投手のカーブなのに左打席の方へ向かって曲がっています。
カーブなのにシュートしているわけです。
わずか3cmの横変化量なので単体でははほぼ真下に落ちる軌道ですが、NPB平均が15.1cmなのでその差は18.1cmになります。
右打者からすると、左投手のカーブは体の方に近づいて食い込んでくるものという感覚を持っているのため、外に逃げていくような感覚になると考えられます。
球種別投球割合を見るとカーブは相手打者の右左に関係なくほぼ同じ割合(対左20.5%,対右21.2%(*3))で投げています。
スライダーは左打者に多め(左14.7%,右4.8%)、チェンジアップは右打者に多め(左7.5%,右23.7%)となっているため、真下に曲がるカーブと打者から見て外に逃げていく球種でピッチングを組み立てているようです。
ノールックもシュート
カーブがシュートする投手というのは非常に珍しいのですが、過去にも一人いました。
ノールック投法でおなじみの元メジャーリーガー左腕、岡島秀樹投手です。
岡島投手のカーブ変化量は下へ8cm、左打席方向へ5cmほど(*2)です。PITCHf/xでの測定結果のため実際はもっと大きくシュートしていたと考えられます。
3Dプロット
キャッチャー方向からの動画です。
計算結果をリニアングラフ3Dでプロットし、画像をgifでパラパラアニメーションにしています。
ではまた。
参考資料 :
(*1) ホークス・モイネロの魔球「カーブ」の秘密!半端ない落差を徹底解剖!(夢スポ 2021年10月OA)
https://www.youtube.com/watch?v=krSXHC6V6lM
(*2)野球×統計は最強のバッテリーである データスタジアム株式会社 中公新書ラクレ 2015年発行
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