2020年5月2日土曜日

第14回 サイドスローの軌道計算



 カーブはまるでフリスビー 

横から投げるサイドスローは、左右の揺さぶりが得意です。

ボール角度がつきやすく、また4シームがシュート気味に来るため反対方向へと曲がるカーブ、スライダー系統の球種の威力がアップします。

サイドスローのカーブは、「フリスビー」に例えられるほど大きく横へ変化します。

腕の振りの角度の違いにより、オーバースローの投手のカーブがサイドスピンとトップスピンの中間ぐらいの回転軸であるのに対し、サイドスローではほぼサイドスピンとなるためです。

今回はそんな、サイドスローのボールの軌道を計算します。

 サイドスローの軌道計算 

カーブと4シームを計算対象とします。

[計算条件]

 4シーム
 球速:v0=135[km/h]、リリース角度:θ=2.0度(上向き)、Φ=5.0、3.5度(一塁方向)
 リリースポイント x0=1.8m(ホーム方向)、y0=-0.8m(三塁方向)、z0=1.0m(高さ)
 ボール回転軸角度 θs=160度、Φs=-30度
 抗力係数 CD=0.40、揚力係数CL=0.20

 カーブ
 球速:v0=120[km/h]、リリース角度:θ=3.5度(上向き)、Φ=2.5度(一塁方向)
 ボール回転軸角度 θs=20度、Φs=90度
 抗力係数 CD=0.42、揚力係数CL=0.25

 ボール回転軸角度の定義
 
 
 
 θs : z軸からx-y平面に向かう角度(真上から水平に向かう角度)
 Φs : x軸からy軸に向かう角度(ホーム方向から一塁側へ向かう角度)


[計算結果]

ボール軌道の計算結果は以下のようになりました。
グラフ中の点は0.02秒ごとのボールの位置を表します。

サイドスローの軌道

・上向きにリリースされ、浅い山なり軌道を描く。
・4シーム、カーブともに横方向への変化量が大きい。

 サイドスローは投げ上げる 

サイドスローではリリースポイントが低いため、ストライクゾーンに投げるために、リリース角度は水平よりも上向きになります。
4シーム、カーブともに上向きに投げ上げられた球は、x=10mあたりで頂点になり、その後緩やかな落下軌道でストライクゾーンを通過していきます。
サイドスローの球は、浅めの山なり軌道を描くのです。

オーバースローが水平よりも下向きに投げおろすのとは対照的です。

オーバースローの軌道を見慣れている打者にとっては、この上下方向の軌道の違いだけでも、少し、打ちづらさを感じることでしょう。

 右へ左へ大きく曲がる 

加えて、横の軌道の違いです。

真上から見たx-y平面上での軌道を見るとカーブがとても大きく曲がっていることが分かります。

右打者インコースへの4シームよりも、アウトコースへのカーブの方がリリース角度は三塁側になっています。
それでいてホームベース上では、アウトコースへのボールゾーンに外れるほど変化量です。

途中でカーブだと気づいた打者は、慌てて腰を引きながら腕を伸ばしてカットしようとするも、バットは届かず無残に空振りすることになるでしょう。


またアウトコースへの4シームは、投げた瞬間はボールになると思いきや、シュート成分が多いためストライクゾーンの方へ戻ってきます。

そのため、アウトコースへの4シームは、バックドアのような軌道になります。


 サイドスロー軌道の3D動画 

エクセルには3Dプロット機能が備わっていないので、代りにRinearnGraph3Dというフリーソフトを使って軌道を3Dプロットし、それをgifで動画ファイルにしてみました。

一コマ0.02秒で実際のスピードと同じにしてあります。

視点は捕手からのものです。

4シーム(右打者インコース)→4シーム(右打者アウトコース)→カーブの順で投げられます。

[3Dプロット動画]

4シーム&カーブ
サイドスローの軌道3D動画





では、また。






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