4シームのホップ量を増やしたい。
投手なら誰もが望むことです。
それを実現するためにはどうしたらよいか?
真っ先に思い浮かぶのは「ボールの回転数を増やすこと」です。
そこで今回は、回転数によりボールの軌道がどれくらい上下に変動するのか、各回転数における4シームの軌道をエクセルで作った軌道シミュレータver.3.2で計算し比較することで、回転数とホップ量の関係を明らかにしていきます。
各回転数における4シームの軌道計算
球速は固定し、回転数に合わせて揚力係数CLおよび抗力係数CDの値を変えることで、各回転数における軌道を計算します。
[計算条件]
4シーム
球速:v0=140[km/h]、リリース角度:θ=0.0度(水平)、Φ=2.5度(一塁方向)
リリースポイント x0=1.8m(ホーム方向)、y0=-0.5m(三塁方向)、z0=1.8m(高さ)
ボール回転軸角度 θs=110度、Φs=-80度
回転数N=0 (SP=0) : 抗力係数 CD=0.368、揚力係数CL=0
回転数N=700[rpm] (SP=0.07) : 抗力係数 CD=0.378、揚力係数CL=0.067
回転数N=2200[rpm] (SP=0.22) : 抗力係数 CD=0.404、揚力係数CL=0.198
回転数N=2700[rpm] (SP=0.27) : 抗力係数 CD=0.415、揚力係数CL=0.237
rpm(revolutions per minute)は一分間あたりの回転数表す単位です。
スピンパラメータSPは回転数と球速の比に比例する値で、これにより抗力係数CDおよび揚力係数CLが決まります。(SPについては前回を参照ください。)
回転数N=0は揚力ゼロの自由落下です。
回転数N=700rpmはフォークボール並の低回転、2200rpmはNPB平均、2700rpmは阪神の藤川投手レベルの高回転数です。
ボール回転軸角度の定義
θs : z軸からx-y平面に向かう角度(真上から水平に向かう角度)
Φs : x軸からy軸に向かう角度(ホーム方向から一塁側へ向かう角度)
[計算条件終わり]
[計算結果]
各回転数におけるボール軌道の計算結果は以下のようになりました。
グラフ中の点は0.02秒ごとの、一番右の点のみホームベース後端(x=18.44m)におけるボール位置を表します。
自由落下のN=0では、水平に投げらえたボールは大きくお辞儀し、ホームベース上(x=18.44m)における高さは0.84mです。
プロ野球平均並みのN=2200rpmでは、ホームベース上のおける高さは1.28mです。自由落下のN=0の軌道に比べ44cm上を通過していきます。つまり、この回転数におけるホップ量は44cmとなります。
プロ野球トップクラスのN=2700rpmでは、ホームベース上の高さは1.37mで、ホップ量は53cmです。
N=2200rpmよりも8.7cmホップ量が大きくなっています。
グラフで見るとN=2700rpmと2200rpmの差はあまりないように見えますが、ボール直径が7.4cm、バット芯部の直径が6.6cmということを考えると、両者の差8.7cmはボールの下を空振りさせるに十分なものだと言えます。
フォークボール並のN=700rpmではホームベース上での高さが0.99m、ホップ量は15cmです。
N=2200rpmと比べホップ量は29cm小さく、落ちる球となっています。実際のフォークボールでは4シームよりも球速が遅いためその効果も加わり、さらに落差は大きくなります。
回転数とホップ量の関係
140km/hの球で、回転数とホップ量の関係をグラフ化すると以下のようになります。
ホップ量はほぼ回転数Nに比例して増加していきます。
そのため、1500prmの低回転から2000rpmの並みレベルの回転数に向上した場合も、2200rpmのNPB平均レベルの回転数から2700rpmのNPBトップレベルになった場合も、同じようにホップ量が増加します。
回転軸改善によるホップ量増加のように、上級者では改善効果が薄れてしまい頭打ちになるということはありません。
回転数が増えた分だけホップ量も増えます。
回転数増加の努力は投手のレベルに関わらず、みなに等しく効果をもたらします。
では、また。
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