あの的
皆さんはバッティングセンターに、行ったことがありますか?
私は好きでよく行きます。
そして、行くたびにいつも疑問に思うことがあります。
バッティングセンターの奥のネット上部に貼りつけてある、ホームランの的です。
あの的に当たるのと同じ打球を、試合で打った時、果たしてホームランになるのでしょうか?
バッティングセンターのサイズ
日本で土地を買ったり、借りたりするのは、ものすごく、お金がかかります。
そのためバッティングセンターは、実際の野球場のように100メートルや120メートルというサイズでは作られていません。もっと狭くなっています。
一般的なバッティングセンターでは、ホームベースから最奥のネットまで40メートルぐらいです。
40メートルというとホームベースから二塁ベースぐらいまでの距離しかなく、簡単に打球が届いてしまいます。
そのため、地上から15メートルぐらいの高い位置にネットを設け、そこにホームランの的を設置することで、当てるのを難しくしています。
もっとも、最奥のネットが高い位置にあるのは、下のネットを斜めにしておくことでボールが転がり自動で戻ってくるようにするためと、ネット下スペースを駐車場として活用する、という経営面での実用的な理由もあるようです。
打ちそこないも届く
野球部出身の経験者からすると、バッティングセンターの的、あるいは最奥のネットは、「簡単に打球が届き過ぎる」と感じているのではないでしょうか。
打ちそこなって、ああこれ試合なら浅い外野フライだな、と思うような打球でもわりと的まで届いてしまいます。
バッティングセンターにはいろいろな人が来ますが、試合のための練習が目的の、いわゆるガチな人にとっては、的に当たりやすいような打球を打つ癖がついて、試合でヒットが打てなくなるのは避けたいものです。
そこで今回は、バッティングセンターの的や奥のネットに当たる打球が、実際の試合ではどのような打球になるのか、軌道シミュレータver3.2で計算してみます。
ホームラン的に当たる打球の軌道計算
[計算条件]
ホームベースから40メートル、地上15メートルの位置に的があるとして、そこを通過していくような打球打速度と角度の組み合わせの条件で計算します。
回転軸は完全なバックスピンで、回転数は打球打速度に合わせた値にしています。
打球の軌道計算結果は、以下にようになりました。
92km/hでもホームラン
ホームラン的に当てることのできる最も遅い打球速度は92km/hとなりました。これ以上遅いと、どのような角度で打っても的まで届きません。
この打球は頂点を過ぎ、落下しながら的に当たります。
この打球は試合ならば、飛距離が52m、浅い外野フライでアウトになるでしょう。
高レベルの試合の場合、外野手が後ろに守っているため運が良ければポテンヒットになるかもしれませんが、下手をすると後退した内野手に捕られ内野フライの記録になるかもしれません。
いずれにしてもしょぼいあたりです。ガチの人が目指す打球ではありません。
逆に、ですが、娯楽目的の人はこのような打球軌道を狙って打てばよいということになります。
打球速度が遅くてもホームランの的に当てることができます。
打った打球がホームランの的に当たれば楽しい気分になりますし、彼女や息子など同行者がいればすごい、すごいと喜んでくれることでしょう。
バッティングセンターはガチの人にはトレーニング施設ですが、一般の人にとっては娯楽施設なので楽しく遊べることが一番です。
100km/hは水平
打球速度100km/hの場合、頂点付近で水平に近い角度で的に当たります。
これは自分の打球速度がどれくらいなのかを知るための、良いものさしになります。
的に落下しながら当たるようなら100km/h以下ですし、上昇しながら当たるなら100km/h以上と判断できます。
この打球は試合で打てば飛距離64メートルです。やはり外野フライに終わるでしょう。
小学生なら外野の頭を超えるかもしれません。
大人で、この打球速度ならば的を狙わず、もう少し低い打球を打つようにした方が、地面に落ちるまでの時間が短くなり試合ではヒットになりやすいです。
150km/hなら本当にホームラン
150km/hの打球では、的まで一直線に上昇していき、頂点よりもずいぶん手前で当たります。
この打球ならば試合で打っても、飛距離110メートルのホームランとなります。
バッティングセンターのホームラン的に当たるのと、実際の試合でホームランになるのを、両立できる打球は確かに存在する、ということが分かりました。
このプロレベルの打球速度が出せる人ならば、バッティングセンターで的を狙って練習すれば、実際の試合でもホームランが打てるようになります。
空港バッティング
愛知県の豊山町、県営名古屋空港近くの国道沿いに「空港バッティング」というバッティングセンターがあります。
イチローさんと、侍J監督の稲葉篤紀さんが少年時代に通い詰めていたことで有名です。
左打席で130km/hの球を打てるのと、奥行きが60メートルもあるのが特徴で、レベルの高い彼らもそれが目当てだったのだと思われます。
私が行ったことのある中では、最も広いバッティングセンターです。
打球軌道は先ほどの計算結果のまま、ネットだけをこの広い空港バッティングのサイズに差し替えると、以下のようになります。
この広さになると、打球速度が最低でも120km/h程度はないと奥のネットまで届きません。
子供や未経験の人ではまず無理な距離です。
私は元野球部で、大人になってからもトレーニングを続けています。
おかげで、この広い空港バッティングでも5ゲームに1回くらい、本当に会心の当たりのときには奥のネットまで届かせることができます。
また、公式戦でのフェンス越えホームランは通算1本ですが、そのときの軟式用グランドがフェンスまで80メートルでした。
そのため、軟式で野球専用球場ではないグラウンドで試合をする(草野球の大半はそうだと思いますが)人は、打球角度を気にしなくても60メートルのネットに届くように練習すれば、試合でもホームランが打てるようになる、といえるでしょう。
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今回の計算結果から、自分の会心の当たりが打球速度120km/h程度だと知ることができました。
打球速度はこれまで測定したことが無く、もう少し遅いと思っていたので、意外と速くて嬉しかったですが、反面、プロレベルの150km/hの打球と見比べるとスケールの違いを思い知らされもします。
いつもプロやメジャーの選手を想定した計算をしていますが、たまには自分のような一般人レベルの計算をしてみるのも楽しいものです。
では、また。
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