プロ野球の華
プロ野球の試合開始直前、アイドルの登場する始球式は、華やかでよいものです。
ガタイのいいプロ野球選手と好対照な、小柄で可愛らしい女性がぎこちないフォームから、ふわり、と、した球を投げる。
ノーバンウンドでキャッチャーまで届き飛び跳ねて喜ぶ人もいれば、途中で地面に落ちてころころと転がってしまい恥ずかしがる人もいます。
事前に練習を重ねてきたのに、当日は緊張で思うように投げられず、悔しさでドアラとの撮影中に泣きだしてしまった子もいたようです。
遠投能力の不足
球が速ければ、よほどコントロールを下向きにミスらない限りノーバウンドで届きます。
しかし彼女たちのように球速が遅いと、そもそもコントロール以前に、遠投能力の不足でノーバウンドで届かない場合もあります。
では、何キロ以上出せればマウンドからストライクゾーンまでノーバウンドで届くようになるのでしょうか?
しかし彼女たちのように球速が遅いと、そもそもコントロール以前に、遠投能力の不足でノーバウンドで届かない場合もあります。
では、何キロ以上出せればマウンドからストライクゾーンまでノーバウンドで届くようになるのでしょうか?
そこで今回は、軌道シミュレータver3.2でノーバウンド投球するために最低限必要な球速を計算してみます。
ストライク投球に必要な球速の計算
ぎりぎりストライクゾーンまで届くときの投球軌道を計算します。
[計算条件]
4シーム
球速 v0=46.0[km/h]、リリース角度 θ=40度(上向き)
リリースポイント x0=0.8m(ホーム方向)、y0=-0.2m(三塁方向)、z0=1.9m(高さ)
ボール回転角度 θs=110度、Φs=-80度
抗力係数 CD=0.38、揚力係数CL=0.06
リリース角度、リリースポイントは動画からの推定値です。
野球未経験者の場合、ステップ幅が小さいためだいぶ後ろでリリースしています。そのためx0は小さくなります。
また、踏み出した左脚の膝がまっすぐ伸びており体の沈み込みがほとんどないため、リリースポイントは高い位置になります。さらにステップ幅が小さくマウンドの頂上に近い位置で投げるためそれによってもリリースポイントは高くなります。その結果、小柄な女性アイドルでも大柄なプロ選手と同じぐらいの高さでリリースしているようで、z0は大きくなります。
抗力係数、揚力係数は回転数が小さいと推定し、プロ選手フォークボール相当の値を使用しました。
[計算結果]
始球式でぎりぎりストライク投球したときの軌道計算結果は、以下のようになりました。
グラフ中の点は0.02秒ごとのボール位置を表します。
球速が46.0[km/h]のときストライクゾーン手前の低めいっぱいをかすめる軌道となります。これより遅いとどのようなリリース角度で投げても、ストライクゾーンまで届かず、低目に外れるボール球になります。
よって、途中でワンバウンドせずに、ストライクを取るために最低限必要な球速は、46.0[km/h]となります。
よって、途中でワンバウンドせずに、ストライクを取るために最低限必要な球速は、46.0[km/h]となります。
また今回のように、球速が遅い場合は40-45度ぐらい上向きを狙って投げると飛距離が最大となり、遠くまで届きやすくなります。
(プロ選手のホームランや遠投など、球速が速い場合は空気力の影響を強く受けるため、30度ぐらい上向きが飛距離最大になります。)
ノーバウンド投球に必要な球速
ストライクゾーンまでは届いても、ホームベースの1mぐらい後ろに構えられたキャッチャーミットまでは届かないのです。
実際にはストライク投球でもキャッチャーがワンバウンドで捕球すると、はたから見ている人達にはノーバウンドで届かなかったように思われてしまうかもしれません。
特にテレビのセンターカメラからの映像だと、そう見られがちです。
どうせだったら見栄えのよい、キャッチャーミットまでノーバウンド投球を目指すべきです。
始球式では試合と違って、例え高めに外れたボール球でもバッターはわざと空振りし、審判はストライクをコールしてくれます。
というわけで、今度はストライクゾーンを通過ではなく、キャッチャーミットまでノーバン投球するのに必要な球速を計算してみます。
[計算条件2]
4シーム
球速 v0=46.0、49.0[km/h]、リリース角度 θ=40度(上向き)
リリースポイント x0=0.8m(ホーム方向)、y0=-0.2m(三塁方向)、z0=1.9m(高さ)
ボール回転角度 θs=110度、Φs=-80度
抗力係数 CD=0.38、揚力係数CL=0.06
球速以外は先ほどと同じ条件です。
[計算結果2]
始球式でキャッチャーまでぎりぎりノーバウンド投球した時の軌道計算結果は、以下のようになりました。
先ほどのストライク投球の軌道も参考に合わせて示します。
球速が49.0[km/h]のとき打者の頭の高さを通過したくそボールが、ストライクゾーンの1m程後ろに構えたキャッチャミットにノーバウンドでおさまります。
というわけで、キャッチャーミットまでノーバウンド投球するために最低限必要な球速は、49.0[km/h]となりました。
上記のように、低目ぎりぎりのストライクを取るのと、ノーバウンド投球するのとに必要な最低球速はわずか3[km/h]しか変わりません。
球速が49.0[km/h]のとき打者の頭の高さを通過したくそボールが、ストライクゾーンの1m程後ろに構えたキャッチャミットにノーバウンドでおさまります。
というわけで、キャッチャーミットまでノーバウンド投球するために最低限必要な球速は、49.0[km/h]となりました。
球が遅いとコントロールが狂う
わずか3[km/h]の差ですが、2つの投球軌道を見比べてみると、上下方向に大きくかい離しています。
同じリリース角度から投げられた、わずか3[km/h]球速が異なる2つの球は、x=18.0m地点を通過するときの高さが1.7mほども異なっています。
つまり、球速が遅い時ほど、わずかな球速差で高低の軌道が大きく変わってしまうのです。
これは実際の試合において「球が遅いと、上下のコントロールを制御するのが難しくなる」ということを意味しています。
毎回同じ球速で投げられる人はいません。同じように投げたつもりでも球速はばらつきます。
そのとき球が遅い人ほど、例えリリース角度をきちんと制御できても、わずかな球速のばらつきにより、上下のコントロールが大きくずれてしまうのです。
そのため、肩の弱い野手ほど、ワンバウンド送球をすることが推奨されます。
また、イーファスピッチという球は誰でも投げられそうでありながら、コントロールを付けるのが非常に難しく、安定してストライクをとることができないため、誰も使いこなすことができないのです。
では、また。
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