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大谷投手4シームの軌道計算
トラッキングデータでは変化量に加え、初速と回転数も測定されています。
これら3つのデータから、軌道シミュレータver3.2により投球軌道を計算し再現することができます。
今回は大谷投手の4シームについて、トラッキングデータの初速と回転数をインプットとして計算した結果がトラッキングデータの変化量と一致するよう、回転軸の値を調整します。
[トラッキングデータ]
2018年デビュー戦の平均値です。
(引用元:Baseball Geeks)
[計算条件]
軌道シミュレータver3.2へのインプットは以下のようです。
[計算結果]
計算された4シームの軌道は以下のようになりました。
図中の点は0.02秒ごとの、一番右はホームベース上(x=18.44m)におけるボール位置です。
灰色線は同じ球速の自由落下軌道で、これとの差が先のトラッキンデータにおける変化量となります。
4シームの特徴
大谷投手の4シームの特徴は、おじぎ量が少なく直線軌道に近いことです。
トラッキンデータとして測定される、バックスピン回転の上向き揚力(マグナス力)によるホップ量は、40cm弱とMLB平均程度です。回転数がそれほど多くないためです。
しかし、球速が速いのでリリースからホームベースに到達するまでの空中を飛んでいる時間が短い、つまり重力を受ける時間が短いため、重力による落下量が平均的な球速の球よりも少なくなります。
そのためトータルでは平均的な球よりもおじぎ量が少なくなります。
ストレート、ではない
では直線軌道と比べるとどうでしょう?
上記のグラフに直線を破線で追加したものが、下図になります。
日本では「ストレート」や「直球」、あるいは「真っ直ぐ」と呼びますが、実際には真っ直ぐな軌道ではないのです。
この157km/hの球がリリースされてからホームベース上に到達するまでの時間はわずか0.4秒ほどですが、重力はその間にボールを79cmも落下させます。
それをバックスピン回転によるマグナス力が39cm上に押し上げ、落下量を40cmまで減らしている、つまり約半分ほどに抑えているわけです。
真っ直ぐ、あるいはホップしてさえいるように見える100マイル近い4シームは、実際には直線と自由落下のほぼ中間の軌道を飛んでいるのです。
敵は重力ではない
ストレートが文字通りの真っすぐではなく、直線よりもおじぎしているというのは現在では広く知られているところですが、初めて聞く人は驚くようです。
私も子供の頃、プロやメジャーリーガーのストレートが実際には重力に負けて下へおじぎしているという事実を知ったとき、やはり驚いたのと同時に信じたくないような、なにかがっかりした気持ちになったのをよく覚えています。
しかし、そんなことはどうでもよいのです。
投手が戦う相手は、時空のゆがみが生み出す重力場ではなく、同じ人間である打者です。
打者の目にどう見え、どう感じるのか。打てるのか、打てないか。そこが焦点です。
3Dプロット
おまけの、3D動画です。
今回計算した投球軌道をCADソフトでプロットし、gif動画にしました。
スピードは実際と同じにしてあります。やはり、速い、です。
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また他の球種についても次回以降、再現計算をしていきたいと思います。
次回はスプリットの予定です。
では、また。
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