反射的に避ける
野球の硬式球は石のように硬く、当たると大変危険です。
全力で投げたストレートが頭に当たれば、ヘルメットの上からでも脳震盪を起こし、立ち上がれなくなる程の強いダメージを受けます。
それゆえ一度でも経験のある打者は、頭に向かってボールが飛んで来ると、瞬間的に恐怖を感じ、防衛本能が働き、無意識で避けようとします。
安全にストライク
狡猾なバッテリーは打者のこの性質を利用し、安全にストライクを奪おうとします。
通常はアウトコースへ逃げていく軌道で投げるカーブを、あえて打者の体に近いインコースに投げ込みます。
投げた瞬間、頭に向かって飛んで来れば、打者は避けようとし、バットを振るのを止めます。そこから曲がってストライクゾーンを通過させれば、打たれることなく、見逃しストライクをとることができます。
この目論見が上手くいくかどうかは、ストライクゾーンを通過するカーブの投げた瞬間の投球軌道が、頭部を襲うストレートと同じ見えるかどうかによります。
そこで今回は、打者の頭に当たる死球となるストレートと、頭に当たるように見えて曲がってストライクなるカーブ、両者の投げた瞬間の軌道がどれくらい似ているのかを、軌道シミュレータver.3.2で軌道計算し比較してみます。
頭部死球ストレートと、インコースカーブの軌道計算
頭部に当たるストレートと、それと同じリリース角度で投げられたカーブの軌道を計算します。
右投手対右打者とします。
[計算条件]
軌道シミュレータver.3.2へのインプットは以下のようです。プロ投手の平均的な球速、回転数、回転数を想定しています。
[計算結果]
頭部死球のストレートと、それと同じリリース角度で投げられたカーブの軌道計算結果は、以下のようになりました。グラフ上の点は0.02秒ごとのボールの位置を表します。
0.1秒後までほぼ同じ
上記の計算結果を見ると、ピッチャープレートから6メートルの位置まで、両者の軌道はほぼ重なっています。これはプレートとホームベース間距離の1/3に相当します。
リリースから、このx=6mを通過するまでの時間は、約0.1秒です。
そのため時間でいうと、リリースから0.1秒後まで、両者の軌道差はとても小さく、ほぼ重なっているということです。
どれくらいの時間までを打者が、投げた瞬間、と感じるのかは不明です。
ストレートがリリースから打者のところへ届くまでの時間はわずか0.43秒ほどのため、0.1秒までボールを見て判断してから行動すると仮定すると、残りの0.33秒でスイングを中断しボールを避ける動作をする必要があります。決して猶予のある時間ではありません。
頭部に当たるリスクと、見逃しでワンストライクとられるリスクを天秤にかければ、0.1秒未満までの軌道を見てとっさに避けることは十分考えられます。
CADソフトで3Dプロット
打者側からどのように見えるのかを表すために、上記で計算した投球軌道をCADソフトで3Dプロットしたものが以下です。
0.02秒ごとのボール位置が示されており、黒色のものはホームベース前端上(x=18.010m)におけるボールの通過点です。
また、投手と打者を模した人体モデル、マウンド、ホームベース、およびストライクゾーンを示す青枠も追加してあります。人体モデルはフリー素材を拾ってきたものですが、なぜか頭の上半分がありませんでした。死球が当たってもげたわけでは、ございませ。
①頭部直撃のストレート
このような軌道で頭に向かって飛んで来れば、慌てて避けます。避けないと死にます。②投げた瞬間の軌道(リリースから0.1秒後まで)
その次に、またこのような球であれば、「もう、だまされねぇ」と打ちにいきますが、
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