風に乗ったホームラン
野球は一部のドーム球場を除いて屋外で行われ、打球の飛び方は風の影響を受けます。
特に影響が大きいのが、ホームラン性の大きな当たりです。飛行時間が長い分だけより、風の影響を強く受けます。
打った瞬間いい角度で上がり、「行った!」と思った打球が強い向い風に押し戻され、フェンス手間で失速して外野フライに終わることがあります。
また反対に、ふらふらっと上がった打球が追い風に上手く乗って、フェンスを越えてしまうこともあります。
プロ野球やメジャーリーグでは、年間を通して、何十本もの大飛球が、向い風により天国から地獄へ叩き落され、追い風により地獄から天国へ救い上げられています。
今回は、軌道シミュレータver3.3で各風速における打球飛距離を計算し、追い風・向い風によりどれくらい打球の飛距離が変わるのか検証してみます。
風を受けた大飛球の軌道計算
[計算条件]ホームラン性の同じ条件の打球を、異なる風速5パターンに対して軌道計算します。
打球速度、回転
打球速度は150km/h、打球角度は上向き30度、回転軸は完全なバックスピンで、回転数は2500rpmとします。
これは無風のときの飛距離が110メートル程で、フェンスまでの距離が近いポール際ならば余裕でホームランになり、距離の遠いセンター方向だとフェンスまでは届かないような打球条件です。
風条件
風は、無風、向い風(2m/s, 5m/s)、追い風(2m/s, 5m/s)の5条件で計算します。風は水平方向、x軸に平行で、一様であるとします。
風速2m/sは、「顔に風を感じる、木の葉が動く」程度の、それほど強くない風です。
それでも、陸上の100m走や走り幅跳びでは、追い風2m/sを超えると新記録を出しても公式に認められず、参考記録にされてしまうぐらいの、影響力はあります。
風速5m/sは、「木の葉や細かい小枝がたえず動く。軽い旗が開く。砂埃が立つには至らない」程度の、やや強めの風です。
インプット値
軌道シミュレータver.3.3へのインプット値は、以下のようです。
[計算結果]
各風条件における、打球の軌道計算結果は、以下のようになりました。
全体として追い風では飛距離アップ、向い風では飛距離ダウンしています。これはボールと空気の相対速度の増加により抗力(空気抵抗)が増加するからで、実際の経験の通りです。
また、同じ角度で打ち出された各打球は、追い風では弾道が低くなり、向かい風では高くなっています。これは、追い風では、ボールと空気の相対速度の減少によりバックスピン回転による揚力(マグヌス力)が低下し、向い風ではその逆となるためです。
風の影響は揚力の増減よりも、抗力の増減の方がより大きく飛距離に対して支配的ということが分かりました。
風速5メートルで、飛距離は10メートル以上変わる
割合で言うと8.8%アップです。
上のグラフを見ると、センター方向の打球ならば、外野フライからホームランに変わることが分かります。
向い風5m/sでは、12.9m飛距離がダウンしています。割合で言うと11.1%のダウンです。
向い風5m/sでは、12.9m飛距離がダウンしています。割合で言うと11.1%のダウンです。
上のグラフを見ると、両翼のホームから最も近い100m地点にあるフェンスをぎりぎり超えていく打球となっています。
そのため、これが少しでもセンター方向へよった打球であれば、フェンスを越えなくなってしまうことが分かります。
風速5m/sの風は、ホームランと外野フライを逆転させてしまうのに、十分な影響力を持っていることが分かりました。
追い風2m/sでは、飛距離が4.4mアップしています。
向い風2m/sでは、-4.9mのダウンです。
風速5m/sの風は、ホームランと外野フライを逆転させてしまうのに、十分な影響力を持っていることが分かりました。
風速2メートルで、飛距離は4メートル以上変わる
向い風2m/sでは、-4.9mのダウンです。
それほど強くない、風速2m/sでも、思った以上に飛距離に影響がでます。
また、同じ風速でも、追い風よりも、向い風の方が、より飛距離を大きく変える、ということが分かりました。
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風の影響は、計算前に予想していたよりも、ずっと大きいという結果になりました。
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風の影響は、計算前に予想していたよりも、ずっと大きいという結果になりました。
屋外球場のホームランは、かなり風の運、不運に左右されているということです。
バッティングの良し悪しや、選手の実力を判断するときは、風の影響を差し引いて考えないと、見誤ってしまうかもしれません。
バッティングの良し悪しや、選手の実力を判断するときは、風の影響を差し引いて考えないと、見誤ってしまうかもしれません。
では、また。
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