風に乗ったホームラン
追い風が吹いていると打球の飛距離が伸びて、風がない時よりもホームランになりやすくなります。
特に、「高く打ち上げた打球は、風に乗ってよく飛ぶ」と言われています。
確かに高く打ち上げた方が滞空時間が長いため、より風の影響を強く受けるはずです。
そこで今回は、追い風に高く打球を打ち上げることは、ホームランを打つための作戦として有効なのかを検証するために、軌道シミュレータver.3.3で各風速における飛距離を計算してみます。
追い風を受ける打球の軌道計算
計算条件
風のない無風時では、打球を水平から30度上向きに打つと最も飛距離が出ることが過去の計算から分かっています。
この30度をベースに、高く打ち上げた場合の40度、低い場合の20度の3パターンそれぞれについて、追い風ありとなし(無風)の2パターンで、計6パターンの軌道計算を行います。
追い風の風速は5m/sとします。風速5m/sは、「木の葉や細かい小枝がたえず動く。軽い旗が開く。砂埃が立つには至らない」程度の、やや強めの風です。
打球速度は150km/h、回転は2500rpmのバックスピン回転とします。
軌道シミュレータver3.3へのインプット値は、以下のようです。
計算結果
破線が無風時、実線が追い風ありでの軌道を表します。
・狙って高く打ち上げたのではなく、意図せず高く打ち上げてしまった場合に、無風ならば最適な30度よりも飛距離が落ちてしまう(グラフ破線)のに、追い風により飛距離の低下がなくなる(グラフ実線)ので、そう感じる。
逆転には至らず
高く打ち上げた40度では飛距離126.7mとなり、30度の126.9mとほぼ同じになりました。高く打ち上げても、飛距離は伸びませんでした。
追い風による増加量を見ると、40度が12.0mアップに対し、30度が10.3mアップです。追い風による飛距離の増加量だけを見れば、高く打ち上げた方がより大きく増加しています。
しかし無風時同士の時で見ると、40度では高く上がりすぎのため30度よりも飛距離が小さくなっています。追い風による増加量の大きさでこの差を埋めることができましたが、逆転するまでには至らなかったということです。
追い風5m/sに対しては、わざわざ高く打ち上げても飛距離は変わらない、ということが分かりました。
強い追い風を受ける打球の軌道計算
では、風速5m/sよりももっと強い追い風の場合はどうなるでしょうか?
次は、風速10m/sの場合で同じ計算をしてみます。
風速10m/sは「池や沼の水面に波頭がたつ」ほどの、かなり強い風です。これ以上強い風では、試合が中止になってしまうこともあります。
打球条件は先ほどと同じく、打球速度150km/h、回転は2500rpmのバックスピン回転で、打球角度は20度、30度、40度とします。
計算結果
追い風10m/sを受ける各打球角度における打球軌道の計算結果は、以下のようになりました。破線が無風時、実線が追い風ありでの軌道を表します。
今度は打球角度40度の飛距離が、30度を上回りました。しかし、その差はわずか90cmです。
100メートル以上の飛距離における、1メートル未満の差異は、実用上意味があるとは言えません。
そのため風速10m/sの強風に対しても、わざわざ高く打ち上げても飛距離は変わらない、というのは同じです。
今日は追い風だからとあえて打ち方を変えてまで打球角度を上げるメリットはない、ということが分かりました。
なぜそういわれるのか
今回の計算結果から、追い風に高く打ち上げても30度と飛距離は変わらないことが分かりました。
ではなぜ、「高々と打ち上げた打球は、風に乗ってよく飛ぶ」と言われているのでしょうか?
以下の2つのことが推測されます。
・同じ角度同士で無風と追い風有りの飛距離を比べた場合(グラフの同色線)、高く打ち上げた時の方が飛距離の増加量が大きいので、そう感じる。
では、また。
0 件のコメント:
コメントを投稿