ボストン・レッドソックス
MLBでは今ポストシーズン真っ盛りです。ア・リーグ優勝決定シリーズに進出したボストン・レッドソックスでは、澤村投手がロースター入りに復帰し活躍が期待されます。
そのレッドソックスの本拠地、フェンウェイパークはメジャーリーグの中でも最も有名な球場の一つです。"グリーンモンスター"と呼ばれる高さ11.3メートルの左翼フェンスがあるためです。
日本のプロ野球本拠地の中では高いと言われているバンテリンドーム ナゴヤでさえ、外野フェンスの高さ4.8メートルです。フェンウェイパークは、その2倍以上です。
異常な高さです。
狭いので致し方なく
なぜそんなにフェンスが高いのかというと、敷地の都合です。
日本プロ野球の標準的な球場では、両翼フェンスまで100メートルになっていますが、フェンウェイパークでは敷地の都合で、左翼フェンスまで94.5メートルしかありません。5.5メートルも狭くなっています。
狭いとホームランが出やすくなってしまい、これでは不公平だということで、フェンスを高くしてホームランを出にくくしました。
名物になることを狙って変な形にしたわけではなく、狭いので致し方なくフェンスを高くしたのです。
そして異常なほど高くした結果、反対に、グリーンモンスターはホームランが出にくい、と言われるようになりました。
大谷選手の今シーズンの11号が、このグリーンモンスターを越えた際にも話題となりました。
狭くて高いは、出にくいのか
グリーンモンスターを越えるホームランを打つことは、どれくらい大変なことなのでしょうか。
日本プロ野球の標準的な球場よりも、狭くて、高いフェンスは、本当にホームランが出にくいのでしょうか?
狭ければ出やすくなり、高ければ出にくくなります。
そこで今回は、グリーンモンスターを越えてホームランになる打球軌道を計算し、どのくらいホームランが出にくいのか検証してみます。
グリーンモンスター越えホームランの打球軌道計算
[計算条件]
レフト線へ打った、ホームラン性の打球を想定します。
打球速度150km/h, 打球角度上向き30°、回転数2000rpmのバックスピン回転の打球をベースとします。そこから条件を変えたパターンを加えて、下記の計4パターンの打球を計算します。
ベース : 150km/h, 30°, 2000rpm
高速/低角度: 160km/h, 18°, 2000rpm低速/高角度: 140km/h, 40°, 2000rpm無回転 : 150km/h, 30°, 0rpm
軌道シミュレータver.3.2へのインプット値は、以下のようです。
[計算結果]
レフト線へのホームラン性の打球、4パターンの打球軌道計算結果は、以下のようです。
越えるか直撃するのか分かるよう、グリーンモンスターもプロットしています。また比較のためバンテリンドームナゴヤの外野フェンスも示しました。
高速/低角度のみ
上記の結果を見ると、ベースの150km/h,30°は、どちらのフェンスも悠々越えてホームランになります。
低速/高角度の140km/h,40°も、両方のフェンスを超えます。狭くて高いグリーンモンスターに対して、高く打ち上げることは有効です。大谷選手の11号ホームランもふらふらっと上がった打球でした。
今回の条件では唯一、高速/低角度の160km/h,18°のみグリーンモンスターとバンテリンで結果が分かれます。グリーンモンスターではフェンスを直撃しホームランになりませんが、バンテリンではホームランになります。速くて低い打球は、グリーンモンスターとの相性が良くありません。
とはいえ、結果が分かれるのはごく限られた打球角度範囲のみです。18°よりももう少し高ければ、例えば20度で計算してみるとグリーンモンスターでも超えますし、もう少し低ければ、例えば15度で計算してみるとバンテリンのフェンスも越えられなくなります。
無回転の打球では、揚力を失い飛距離が落ちた結果、どちらのフェンスでも直撃し越えなくなります。
公平な審判
以上のように、フェンウェイパークのグリーンモンスターとバンテリンドームナゴヤの外野フェンスを比べると、ごく限られた範囲の高速/低角度の打球のみグリーンモンスターではホームランが出にくいが、全体的に見ればホームランの出やすさは同程度、という結果になりました。
上手く設計されているものです。11.3メートルという高さも適当ではなく、検討を重ねた上で決められたものだと思われます。
グリーンモンスターは、飛んできた打球を何も考えず無差別に叩き落してまうような知性無き怪物ではなく、他球場でもホームランになると判断される打球のみその上を通過させます。さながら、公平な審判を下す閻魔のような存在です。
では、また。
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