2022年2月12日土曜日

第106回 トップスピン回転カーブの軌道計算

 

セパNo.1先発投手のカーブ

オリックス山本投手と、中日柳投手。21年セ・パ両リーグのベストナインに選ばれた二人には共通点があります。カーブも決め球として使えることです。

2人のカーブをスローで見るとよく似た回転軸をしています。ほぼ垂直なトップスピン回転です。


トップスピン回転を投げる投手

カーブを得意としている投手の多くは垂直なトップスピン回転の球を投げています。中日小笠原投手、レイズのグラスノー投手、元レッドソックス岡島投手などです。カーブで三振をとれるタイプです。

回転が垂直であれば変化も垂直で横へはあまりスライドせず、縦に大きく割れるような軌道となります。昭和の頃にドロップと呼ばれていた球です。

一般的に変化球は横の変化よりも縦の変化の方が威力があると言われています。これはカーブにも当てはまるようです。

普通の投手が投げる普通のカーブの回転軸はスライド方向のサイドスピン成分が入っており、斜め下へ曲がっていきます。横へ曲がるようサイドスピン回転を入れると同時にジャイロスピン成分も多く混じってしまいます。結果、回転数のわりに揚力が弱く曲がりが小さくなります。カーブの投球割合が少なくカウント球にしか使われないタイプです。

今回はトップスピン回転のカーブと、スライド成分およびジャイロ成分の混じった斜めの回転軸をした普通のカーブの軌道を計算し、比較してみます。


トップスピンカーブの軌道計算

球速、回転数は同じで回転軸のみ変えた2つのカーブ軌道を計算します。普通のカーブはサイドスピン成分とジャイロスピン成分がそれぞれ45度混じっているとします。

軌道シミュレータver.3.2へのインプットは以下のようです。値はプロ野球の平均的な右投手を想定したものです。

[計算条件]

球速 v0=125[km/h], 回転数2600[rpm] , 抗力係数 CD=0.42, 揚力係数 CL=0.25
リリースポイント {x0,y0,z0}={1.9, -0.7, 1.8} [m]
リリース角度: 上向き θ=1.5度, 横向き Φ=1.7度

回転軸
トップスピン回転のカーブ :θs=90度 (z軸→x軸), Φs=90度 (x軸→y軸)
普通のカーブ:θs=45度 (z軸→x軸), Φs=45度 (x軸→y軸) 
 
投手方向から見た回転軸

 


[計算結果]

トップスピンカーブと普通の回転軸のカーブの軌道計算結果は、以下のようになりました。両者は同じリリース角度で投げられています。グラフ中の点は0.02秒ごとの、右端のみホームベース上(x=18.01m)におけるボール位置を表します。

トップスピンカーブ軌道計算結果



縦の落下量はトップスピン回転のカーブの方が29cm大きくなっています。ボール4個分ほどより大きく下へ変化しています。

横の変化量は普通の回転のカーブが41cmです。トップスピンカーブは横へは曲がらないためこれがそのまま両者の差になります。ホームベースの横幅と同じぐらいの違いです。同じリリース角度で投げられた球がそれぞれインコース、アウトコースの厳しいところへと分岐していきます。





3Dプロット動画

今回計算した2つのカーブをCADソフトで3Dプロットし、gif動画にしました。参考に145km/hのストレートを真ん中に投じたものも追加しました。

スピードは実際と同じにしてあります。

トップスピンカーブ3Dプロット


こうしてみてもやはりトップスピン回転の縦のカーブの方が不自然な軌道で打ちにくそうですね。




ではまた。







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