ヘッスラvs足スラ
ヘッドスライディングと足からのスライディング。
どちらがより早くベースに到達できるだろうか?
一般的にはヘッドスライディングのほうが早いというイメージを持たれているようである。
物理学的な観点からは、ベースに触れる部分が体の重心から離れている方が有利だと言える。
重心から足裏までの距離L1と、万歳をした時の重心から手先までの距離L2を比べ、L1>L2なら足スライディングのほうが早い。L2>L1ならヘッドスライディングのほうが早い。
図1 |
スライディングするとき、地面をけり体が宙に浮くともはや足からの力で体の重心を加速することはできなくなる。
どちらのスライディング方法でも重心の動きが変わらないのであれば、ベースに触れる部分が重心から遠いほど、ベースに触れる部分はよりベースに近くなり、早くベースに触ることができる。
数値で比較
図1のポンチ絵ではL2がL1よりかなり大きいが、実際にはそこまで差はない。
数値を計算してみる。
直立姿勢での足裏から重心までの距離L1は身長のおよそ6割であるため、180cmの選手ではL1=110cmほどである。
手を上に挙げたときの足裏からの距離は身長のおよそ1.2倍であるため、180cmの選手では220cmほどである。これからL1を引けばL2=110cmとなり、L1とほぼ同じである。
手を上に挙げると腕の重量分だけ重心が頭の方へ移動することを考慮すると、L2はこれよりも少し小さくなる。
L1>L2となる。
そのためヘッドスライディングは足スライディングよりも早いとは言えない。
加えてプロ野球選手は一般人よりもスタイルが良く、足が長く重心位置が高いため、L1が大きい。
そのため足スライディングのほうがやや早いと考えられる。
調査報告
実際に1塁から2塁までの到達時間をリトルリーグ、高校、大学の選手で調べた報告がある。
どのレベルでも「同じか、足からのスライディングのほうが早い」という結果がでている。(*1)
ヘッドスライディングはケガをしやすい上に、早くならないのである。通常は足スライディングをするのがよい。
ヘッドスライディングをするメリットは、足より自在に動く手でタッチをかいくぐれることである。左手を前に出しておき、タッチが来たら引っ込め右手で三塁ベースを触るテクニックはプロ野球でも成功例がみられる。
また牽制球の帰塁時は、速度がゼロの重心を足で加速しながらスライディングする必要があるため頭から戻る。
(*1) 参考文献:BBMスポーツ科学ライブラリー 科学する野球 バッティング&ベースランニング 平野裕一著 ベースボール・マガジン社
ヘッスラvs駆け抜け
ちなみに上記の参考文献によると、内野ゴロで打者走者が1塁へ走るときについても調べられている。
結果は「ヘッドスライディングより駆け抜けた方が早い」、ただし「スライディング距離を短くして1塁のやや右へヘッドスライディングすれば、駆け抜けよりも早いが、けがのリスクも高まる」とのこと。
うまくやればヘッドスライディングのほうが早くなる可能性はあるが、10・8の立浪監督のようになるリスクのほうが高い。ヘッドスライディングのコツ
ヘッドスライディンで早くベースに到達するためコツは、重心から手先までの距離L2が大きくなるような姿勢をとることである。
そのためには足の膝から先を後ろへ、真っすぐ伸ばせばよい。膝下の重量分だけ重心が手と反対方向へ移動しL2が増加する。
図2 |
守備でダイビングキャッチをするときも同様である。
足を真っすぐ伸ばすことで、グラブをボールに近づけることができる。名手のダイビングキャッチを美しいと感じるのは、手足がきれいに伸ばされているからである。
またバレーボールではスパイクを打つ選手も、それをブロックする選手も足がまっすぐ伸びている。ネットを挟んだ敵同士の選手が同じような姿勢をとる。足を真っすぐ伸ばし重心を体の下の方へ移動させることで、同じ重心の高さでもL2が大きい分、手の位置を高くすることができる。
足スライディングのコツ
足からのスライディンで早くベースに到達するためコツは、重心から足先までの距離L1が大きくなるような姿勢をとることである。
そのためには上半身を後ろへ倒せばよい。上半身の重量分だけ重心が足先と反対方向へ移動しL1が大きくなる。
図3上のポンチ絵のように完全なあおむけでは背中が地面と接し摩擦によりブレーキがかかるし、前が見えないので、実際は少し起こす。
図3 |
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