飛ぶ飛ばない
ボールの飛ぶ飛ばないは、たびたび議論になります。特にNPBでは、2011年の飛ばない統一球、およびそ13年前半の飛びすぎるボールが問題となりました。
統一球
統一球は、国際大会のボールに近づける目的で導入されました。
それまでの複数メーカーから納入されていた試合球は、ミズノ社一社に統一されました。
2011年シーズンから導入され、まず最初の問題が発生します。
急に、打球が飛ばなくなりました。
ホームランが激減し打率は急降下、極度の投高打低となったシーズンは、広いナゴヤドームと中継ぎ初のMVP浅尾投手を擁する中日ドラゴンズのセリーグ2連覇という結果に象徴されます。
シーズン60HR
次の問題が2013年、シーズン前半に発生します。
今度は、やたらと打球が飛ぶようになったのです。飛びすぎるようになったのです。
おかしい、と訴える選手会に対しNPB側は、ボールは変えていない、と回答しますが、のちに嘘がばれて叩かれます。統一球は野球ファンから加藤球と呼ばれ揶揄されました。
この年はヤクルトのバレンティン選手が、不可侵とされていた王さんの記録を塗り替えるシーズン60HRを放ちました。
反発係数
このときの飛ぶ飛ばないは、ボールの「反発係数」の違いが原因だと言われています。
そのためNPBは一連の騒動後の2015年、ボールの反発係数について「0.4134を反発係数の目標値とする」と定めています。(*1)
では、2011年の飛ばないボールと13年の飛びすぎるボール、これらの反発係数はどれくらいだったのでしょうか。
NPBのホームページでは、検査の結果「2011年ナゴドで反発係数0.411、13年神宮球場が0.416」であったと記載されています。(*2)
これは信用できるでしょうか。Wikipediaの記事からは「2011年は0.408、13年は0.426」だったと読み取ることもできます。(*3)
参考Webサイト
(*1) 統一試合球に関する規則改正について | NPBからのお知らせ | NPB.jp 日本野球機構
(*2) プロ野球統一試合球 平均反発係数検査結果(2011年) | NPBからのお知らせ | NPB.jp 日本野球機構
(*3) ボール(野球)-Wikipedia
今回は、反発係数の違いにより、打球の飛距離がどのくらい変わるのか計算してみます。
2段階で、まずそれぞれの反発係数で打球速度を算出し、次に打球速度から飛距離を求めます。
打球速度計算
反発係数の値を2011年シーズンは0.408、13年は0.426、15年以降は0.4134と仮定します。
その他条件は、投球速度130km/h、スイングスピード140km/h(芯部速度119km/h)で共通とします。
計算結果は以下のようです。
2013年の高反発球(e=0.426)は171km/hです。
2015年以降の現行球(e=0.4134)は169km/hです。
同じように打っても11年と13年ではボールの違いにより打球速度が4km/h違っていたことになります。
打球軌道計算
上記の打球速度をインプットとして、軌道計算で飛距離を求めます。
その他条件は共通で、打球角度上向き25度、1500rpmのバックスピン回転とします。
計算結果は以下のようです。
2011年の低反発球は飛距離124メートルです。
13年の高反発球は128メートルで、15年以降の現行球は125メートルです。
11年の飛ばないボールと13年の飛ぶボールでは、同じように打っても飛距離が4メートル違っていたことになります。
11年の球なら122メートル先のセンターフェンス直撃していた打球が、13年ではフェンスの3メートル上を通過しゆうゆうホームランになります。
15年以降の現行球ではフェンスを越えるか超えないかぎりぎりのところです。
4メートル
120メートル飛ぶ内の4メートルは3%程度の差ですが、ホームランになるかならないかでは結構影響してくるのかもしれません。
というのも、広いと言われるバンテリンドーム(ナゴヤドーム)の左中間が116メートルで、狭いと言われる東京ドームが111メートルで、その差5メートルです。
知らぬ間に変えられていたボール一つで、それに近い違いが生じていた可能性があるわけです。
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