鋭く落ちるカッター
ダルビッシュ有投手はとても多くの球種を投げることができ、その数は10種類とも11種類とも言われています。
その中でも4シームの次に投球割合が多いのが「カッター」です。
(カッターは日本ではカットボールと呼ばれています。)
カッターも1種類ではなく、縦スラのように鋭く落ちる「スラッター」と、4シームのようにホップする「ハードカッター」の2種類を投げ分けているそうです。
本当に器用な投手です。
*****
では、また。
図1:ダルビッシュ投手のトラッキングデータ
(引用元:ピッチングデザイン、集英社、お股ニキ著、2020年発行)
自由落下に最も近い
図1の変化量を見ると、カッター(スラッター)は全球種の中で最も原点に近い位置にあります。
つまりカッターは自由落下に近い軌道の球だということです。
(※以下、本文中のカッターは、図1のスラッターと同じものを指します。)
このことから、ダルビッシュ投手のカッターはほぼジャイロ回転をしており、投手から見て回転軸を少しだけ左上に向けることで、わずかにスライド成分とトップスピン成分を与えていることが分かります。
つまりカッターは自由落下に近い軌道の球だということです。
(※以下、本文中のカッターは、図1のスラッターと同じものを指します。)
このことから、ダルビッシュ投手のカッターはほぼジャイロ回転をしており、投手から見て回転軸を少しだけ左上に向けることで、わずかにスライド成分とトップスピン成分を与えていることが分かります。
ダルビッシュ有カッターの軌道計算
図1に示されるように、トラッキングデータでは変化量に加え、初速と回転数も測定されています。
これら三つのデータから、軌道シミュレータver3.2により投球軌道を計算し再現することができます。
今回はダルビッシュ有投手のカッターについて、トラッキングデータの初速と回転数をインプットとして計算した結果がトラッキングデータの変化量と一致するよう、回転軸の値を調整します。
[トラッキングデータ]
図1の通りです。2019年シーズンの平均値です。
[計算条件]
軌道シミュレータver3.2へのインプットは以下のようです。参考に前回計算した、4シームのものも示します。
[計算結果]
計算されたカッターの軌道は以下のようになりました。
図中の点は0.02秒ごとの、一番右はホームベース上(x=18.44m)におけるボール位置です。
灰色線は同じ球速の自由落下軌道で、これとの差が先のトラッキンデータにおける変化量となります。
[計算結果2]
以下は前回計算した4シームと一緒にプロットしたものです。
同じ角度でリリースしたときのホームベース上(x=18.44m)における位置の差も、併せて表示しました。
gif動画(実際のスピード)
gif動画(1/10倍スロー)
静止画
4シームのとの比較
●横の変化
4シームとカッターのホームベース上(x=18.44m)における位置の違いを見ると、横方向(y方向)は24cmとなっています。
これは図1トラッキングデータの変化量、4シームが一塁側へ9.1cmとカッターが14.3cmを足したものそのままになります。
同じ角度でリリースされた球が、4シームは右打者のインコースへ、カッターはアウトコースへと分岐していきます。
24cmの差は、ホームベースの幅の半分よりも少し大きいぐらいの差です。
変化が多すぎないためストライクゾーンに投げてカウントを稼ぐの適しているので、投球割合が高いのだと思われます。
●縦の変化
上下方向の差をみると64cmとなっています。
これは図1の4シームが上へ40.8cmと、カッターが下へ-6.7cmを合わせた47.5cmよりも、16.5cm大きくなっています。
この16.5cmは球速の差による重力を受けている時間の差によって生まれるものです。
図1のようなトラッキングデータの変化量を見て球種同士の比較をするときには、「横方向の差は変化量そのままの差だが、上下方向の差は球速差によってさらに広がる」、というの頭に置きながら見ると、実際の投球軌道のイメージがしやすくなります。
同じ角度でリリースされた球が、4シームはストライクゾーンの高めへ、カッターは低目のボールゾーンへと分岐していきます。
64cmの差は、ストライクゾーンの上下幅と同じぐらいの大きな差です。
縦の変化が大きいため打者が振ってきても空振りをとることができるため、最も打ちにくい球種の一つとなっています。
4シームとカッターのホームベース上(x=18.44m)における位置の違いを見ると、横方向(y方向)は24cmとなっています。
これは図1トラッキングデータの変化量、4シームが一塁側へ9.1cmとカッターが14.3cmを足したものそのままになります。
同じ角度でリリースされた球が、4シームは右打者のインコースへ、カッターはアウトコースへと分岐していきます。
24cmの差は、ホームベースの幅の半分よりも少し大きいぐらいの差です。
変化が多すぎないためストライクゾーンに投げてカウントを稼ぐの適しているので、投球割合が高いのだと思われます。
●縦の変化
上下方向の差をみると64cmとなっています。
これは図1の4シームが上へ40.8cmと、カッターが下へ-6.7cmを合わせた47.5cmよりも、16.5cm大きくなっています。
この16.5cmは球速の差による重力を受けている時間の差によって生まれるものです。
図1のようなトラッキングデータの変化量を見て球種同士の比較をするときには、「横方向の差は変化量そのままの差だが、上下方向の差は球速差によってさらに広がる」、というの頭に置きながら見ると、実際の投球軌道のイメージがしやすくなります。
同じ角度でリリースされた球が、4シームはストライクゾーンの高めへ、カッターは低目のボールゾーンへと分岐していきます。
64cmの差は、ストライクゾーンの上下幅と同じぐらいの大きな差です。
縦の変化が大きいため打者が振ってきても空振りをとることができるため、最も打ちにくい球種の一つとなっています。
CADソフトでプロット
軌道を3D表示したいのですが、エクセルには3D表示機能がありません。
そこで、試しにCADソフトを使ってみました。
FreeCADというフリーソフトがあったので、インストールして軌道をプロットして、動画にしてみました。
視点はキャッチャー方向からのものです。
青い半透明の四角はストライクゾーンで、下の黒いのはホームベースです。
カッターはストライクゾーンに入るよう、少しリリース角度を上向きに変更してあります。
カッターの急激な落下具合が伝わるでしょうか?
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次回はスライダーの再現計算をする予定です。
では、また。
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