動く速球
ダルビッシュ有投手はとても多くの球種を投げることができ、その数は10種類とも11種類とも言われています。
その中でも4シームの次に投球割合が多いのが「カッター」です。
(カッターは日本ではカットボールと呼ばれています。)
カッターも1種類ではなく、4シームのように速く真っすぐに見えて手元で少しだけ変化する「ハードカッター」と、縦スラのように鋭く落ちる「スラッター」と、の2種類を投げ分けているそうです。
本当に器用な投手です。
直線軌道と比べボール一個分横へスライドするということは、反対方向へ変化する4シームをまっすぐと認識している打者の感覚からすると、ボール2個分ぐらいの変化として感じるかもしれません。
いずれにしてもボール1,2個分だけの小さな変化をする球が4シームと5キロしか変わらない球速で飛んでくるわけで、スイング開始前までにどちらなのか見分けるのは至難の業でしょう。
同じ角度でリリースされた球が、4シームは右打者のインコースへ、ハードカッターはほぼ真ん中へと分岐していきます。
17cmの差は、ボール2個分よりも少し大きいぐらいの差です。
バットの芯の幅は10~15cm程度だといわれているので、芯を外すにはちょうど良い変化の大きさです。
●縦の変化
上下方向の差をみると27cmとなっています。
これは図1の4シームが上へ40.8cmから、ハードカッターが上へ19.8cmを差し引いた21cmよりも、6cm大きくなっています。
この6cmは球速の差による重力を受けている時間の差によって生まれるものです。
わずか5キロ球速差でも、ボール0.8個分ほどの差がつきます。
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では、また。
図1:ダルビッシュ投手のトラッキングデータ
(引用元:ピッチングデザイン、集英社、お股ニキ著、2020年発行)
ボール一個分
図1の変化量を見ると、ハードカッターは全球種の中で横への変化量が最も小さくなっています。
変化量は7.7cmしかなく、これはボールの直径(7.4cm)とほぼ同じです。
変化量は7.7cmしかなく、これはボールの直径(7.4cm)とほぼ同じです。
つまり俗に言う「ボール一個分だけ動く」という表現の通りなのです。
直線軌道と比べボール一個分横へスライドするということは、反対方向へ変化する4シームをまっすぐと認識している打者の感覚からすると、ボール2個分ぐらいの変化として感じるかもしれません。
いずれにしてもボール1,2個分だけの小さな変化をする球が4シームと5キロしか変わらない球速で飛んでくるわけで、スイング開始前までにどちらなのか見分けるのは至難の業でしょう。
ダルビッシュ有カッターの軌道計算
図1に示されるように、トラッキングデータでは変化量に加え、初速と回転数も測定されています。
これら三つのデータから、軌道シミュレータver3.2により投球軌道を計算し再現することができます。
今回はダルビッシュ有投手のハードカッターについて、トラッキングデータの初速と回転数をインプットとして計算した結果がトラッキングデータの変化量と一致するよう、回転軸の値を調整します。
[トラッキングデータ]
図1の通りです。2019年シーズンの平均値です。
[計算条件]
軌道シミュレータver3.2へのインプットは以下のようです。回転軸はジャイロ回転をベースとし、少し軸を右に傾けてホップ成分を与え、さらにほんの少しだけ上に傾けることによりごくわずかなスライド成分を与えています。
[計算結果]
計算されたハードカッターの軌道は以下のようになりました。
図中の点は0.02秒ごとの、一番右はホームベース上(x=18.44m)におけるボール位置です。
灰色線は同じ球速の自由落下軌道で、これとの差が先のトラッキンデータにおける変化量となります。
[計算結果2]
以下は以前計算した4シームと一緒にプロットしたものです。
同じ角度でリリースしたときのホームベース上(x=18.44m)における位置の差も、併せて表示しました。
gif動画(実際のスピード)
gif動画(1/10倍スロー)
静止画
4シームのとの比較
●横の変化
4シームとハードカッターのホームベース上(x=18.44m)における位置の違いを見ると、横方向(y方向)は17cmとなっています。
これは図1トラッキングデータの変化量、4シームが一塁側へ9.1cmとハードカッターが7.7cmを足したものそのままになります。
4シームとハードカッターのホームベース上(x=18.44m)における位置の違いを見ると、横方向(y方向)は17cmとなっています。
これは図1トラッキングデータの変化量、4シームが一塁側へ9.1cmとハードカッターが7.7cmを足したものそのままになります。
同じ角度でリリースされた球が、4シームは右打者のインコースへ、ハードカッターはほぼ真ん中へと分岐していきます。
17cmの差は、ボール2個分よりも少し大きいぐらいの差です。
バットの芯の幅は10~15cm程度だといわれているので、芯を外すにはちょうど良い変化の大きさです。
●縦の変化
上下方向の差をみると27cmとなっています。
これは図1の4シームが上へ40.8cmから、ハードカッターが上へ19.8cmを差し引いた21cmよりも、6cm大きくなっています。
この6cmは球速の差による重力を受けている時間の差によって生まれるものです。
わずか5キロ球速差でも、ボール0.8個分ほどの差がつきます。
同じ角度でリリースされた球が、4シームはストライクゾーンの高めへ、カッターはほぼ真ん中へと分岐していきます。
27cmの差は、ストライクゾーンの上下幅の半分弱ほどの差です。
ハードカッターといっても4シームと比べるとだいぶ沈んでいます。
ダルビッシュ投手のようにジャイロ回転をベースにしたカットボールでは回転軸によりホップ量が小さくなるのは避けられないので、なるべく球速差を小さくして重力落下による差を小さくすることでカバーしています。
27cmの差は、ストライクゾーンの上下幅の半分弱ほどの差です。
ハードカッターといっても4シームと比べるとだいぶ沈んでいます。
ダルビッシュ投手のようにジャイロ回転をベースにしたカットボールでは回転軸によりホップ量が小さくなるのは避けられないので、なるべく球速差を小さくして重力落下による差を小さくすることでカバーしています。
左投手の4シームのようなバックスピン回転をベースにしたカットボールが投げられればホップ量を大きくすることができるはずですが、投げる投手はほとんどいないようです。
投げるのがよほど難しいのかもしれません。
あるいは真横に曲げるより少し沈ませた方がゴロを打たせやすいなどの理由であえて沈ませているのかもしれません。
CADソフトでプロット
今回もCADソフトで、3D gif動画を作りました。
視点はキャッチャー方向からのものです。
青い半透明の四角はストライクゾーンで、下の黒いのはホームベースです。
距離感を出すために、右打席とピッチャープレートの位置に人体モデルを立たせてあります。
(フリーデータを拾って来たのですが、なぜか頭の上半分がありませんでした。)
ハードカッター、4シームともに同じリリース角度で投げられています。
ハードカッターが手元で小さく動く感じが伝わるでしょうか?
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次回はカーブの再現計算をする予定です。
では、また。
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