一試合で3,4球
ダルビッシュ有投手はとても多くの球種を投げることができ、その数は10種類とも11種類とも言われています。
同じ角度でリリースされた球が、4シームは右打者のインコース甘めへ、スプリットはインコースやや厳しめへと分岐していきます。
6cmの差は、ボール1個分よりも小さい差です。
●縦の変化
上下方向の差をみると35cmとなっています。
これは図1の4シームが上へ40.8cmから、スプリットが上へ16cmを差し引いた25cmよりも、10cm大きくなっています。
この10cmは11km/hの球速差による重力を受けている時間の差によって生まれるものです。
では、また。
スプリットも投げます。
しかしその投球割合は3.8%弱と低く、およそ26球に1球程度です。
先発で一試合投げる中で3球か4球しか投げない計算になります。
田中将大や野茂英雄といった、多くの日本人メジャーリーガーがスプリットを武器に活躍したのとは対照的です。
図1:ダルビッシュ投手のトラッキングデータ
(引用元:ピッチングデザイン、集英社、お股ニキ著、2020年発行)
かぶらないように落とす
図1の変化量を見ると、スプリットは4シームの真下あたりに位置しています。
真下に落とすことで、4シームに比べ左右に変化する2シームやハードカッターと変化量が同じにならないようにしています。
ここにも彼の器用さが見てとれます。
最近では中日の大野雄大投手やDeNAの山崎投手が投げているような、2シームなのかスプリットなのか分類しづらい軌道の挟んで落とす2シームが増えてきていますが、ダルビッシュ投手は少し沈む2シームと、スプリットをきちんと投げ分けているようです。
また球速が142.5km/hと速く、ホップ量が16cmであり、少しだけ沈む速球として投げているのも特徴です。
スラッターとかぶらないようあまり大きく落とさないように調整しているのかもしれません。
ダルビッシュ有スプリットの軌道計算
図1に示されるように、トラッキングデータでは変化量に加え、初速と回転数も測定されています。
これら三つのデータから、軌道シミュレータver3.2により投球軌道を計算し再現することができます。
今回はダルビッシュ有投手のスプリットについて、トラッキングデータの初速と回転数をインプットとして計算した結果がトラッキングデータの変化量と一致するよう、回転軸の値を調整します。
[トラッキングデータ]
図1の通りです。2019年シーズンの平均値です。
[計算条件]
軌道シミュレータver3.2へのインプットは以下のようです。参考に以前計算した、4シームのものも示します。
回転軸は4シームからシュート成分、ジャイロ成分を増やす方向に傾いています。
[計算結果]
計算されたスプリットの軌道は以下のようになりました。
図中の点は0.02秒ごとの、一番右はホームベース上(x=18.44m)におけるボール位置です。
灰色線は同じ球速の自由落下軌道で、これとの差が先のトラッキンデータにおける変化量となります。
[計算結果2]
以下は以前計算した4シームと一緒にプロットしたものです。
同じ角度でリリースしたときのホームベース上(x=18.44m)における位置の差も、併せて表示しました。
gif動画(実際のスピード)
gif動画(1/10倍スロー)
静止画
4シームのとの比較
●横の変化
4シームとスプリットのホームベース上(x=18.44m)における位置の違いを見ると、横方向(y方向)は6cmとなっています。
これは図1トラッキングデータの変化量、4シームが一塁側へ9.1cmと、スプリットが15cmの差そのままになります。
4シームとスプリットのホームベース上(x=18.44m)における位置の違いを見ると、横方向(y方向)は6cmとなっています。
これは図1トラッキングデータの変化量、4シームが一塁側へ9.1cmと、スプリットが15cmの差そのままになります。
同じ角度でリリースされた球が、4シームは右打者のインコース甘めへ、スプリットはインコースやや厳しめへと分岐していきます。
6cmの差は、ボール1個分よりも小さい差です。
4シームを基準としてほぼ真下に落ちるような軌道です。
●縦の変化
上下方向の差をみると35cmとなっています。
これは図1の4シームが上へ40.8cmから、スプリットが上へ16cmを差し引いた25cmよりも、10cm大きくなっています。
この10cmは11km/hの球速差による重力を受けている時間の差によって生まれるものです。
同じ角度でリリースされた球が、4シームはストライクゾーンの高めへ、スプリットは真ん中からやや低目へと分岐していきます。
4シームと35cmも落差があり低目にコントロールすれば十分決め球にも使えるのにほとんど投げないのはもったいない気もします。
4シームと35cmも落差があり低目にコントロールすれば十分決め球にも使えるのにほとんど投げないのはもったいない気もします。
なにかこだわりがあるのかもしれませんね。
CADソフトでプロット
今回もCADソフトで、3D gif動画を作りました。
視点はキャッチャー方向からのものです。
青い半透明の四角はストライクゾーンで、下の黒いのはホームベースです。
距離感のために、右打席とピッチャープレートの位置に人体モデルを立たせてあります。
スプリット、4シームともに同じリリース角度で投げられています。
スプリットの4シームとの見分けにくさが伝わるでしょうか?
速球を四角く投げ分ける
ダルビッシュ投手は4シーム、2シーム、ハードカッター、そして今回のスプリットと、140km/hを超える速球を4種類投げています。
同じリリース角度で投げられた球が四方へ分岐していき、ホームベース上できれいな四角形を描くその投げ分けが見事なので、軌道を3Dプロットしました。
では、また。
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