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2024年7月21日日曜日

第162回 Excelでソフトボール場を作図する

 

幾何学的

私は野球が好きですが、女子ソフトボールも好きです。
3年前の東京五輪でのダブル金メダル獲得は最高でした。
今回のパリ五輪は野球・ソフトボールがないので寂しさを感じています。

さて今回はソフトボールのグラウンドを、Excelを使って描いてみたいと思います。女子一般国際ルールです。
ルールにより各寸法が定められたグラウンドは幾何学的で、整った形をしています。
そのため、適当な座標系を指定し、簡単な寸法計算をするだけで作図することができます。



ホームベース

まず最初は、ホームベースです。これは野球と共通です。

野球・ソフトをやる老若男女みんなが同じホームベースを使ってプレーします。

家のような形をしているため"ホーム"ベースと呼ばれますが、正五角形ではなく、一辺が43.2cmの正方形の角2つを辺の中点で結ぶラインで切り落とした形をしています。

ベース後端(捕手側)の点を原点にとり、センターラインをy軸、一塁方向を+x軸にとります。

Excelで計算した値と式、および散布図でプロットした結果は以下のようです。単位はメートルです。

ホームベースの作図



バッターボックス、ファールライン

次は左右のバッターボックスとライト、レフトのファールラインです。

バッターボックスは縦2.13メートル、横0.91メートルの長方形です。野球の縦1.824メートル、横1.219メートルに比べ縦長でピッチャー側に長くなっています。

ファールラインはホームベース後端(上図の点0)からセンターラインに対しそれぞれ45度の方向に67.06メートル先まで伸ばされた直線(線分)です。45度のため、√2で割るだけでの伸ばした先の端点、すなわち両翼ポールの点のx,y座標を求めることができます(cos45°=sin45°=1/√2)。


Excelで計算した値と式、および散布図でプロットした結果は以下のようです。

バッターボックス、ファールラインの作図

野球のボックスとも重ねてみました。赤線がソフトで、青が野球です。

上記のバッターボックス寸法の違いにより、ファールラインの始点が異なります。野球ではボックス前側からファールラインが生えていますが、ソフトボールは外側から生えています。

野球に慣れている人にとってはちょっとした違和感ですが、ぱっと見で野球場かソフトボール場かを見分けるよい目印にもなります。

またこうして改めてみると、野球のボックスは無駄に横幅が広い気がします。巨人坂本選手はホームベースから離れて立ちますが、それでもせいぜい30cm程度ですから、ソフトボールの幅でも十分納まります。




123塁ベース、ピッチャープレート

次は1,2,3塁の各ベースと、ピッチャープレートです。

ソフトボールの塁間距離は18.29メートルです。

野球の27.431メートルよりも10メートル弱短くなっています。

野球部員が体育の授業でソフトをやったとき、打球を見ながら走っていたら、いつの間にかベースを通り過ぎてしまってみんなに笑われるのは、あるあるです。

2,3塁ベースのサイズは野球と同じで、一辺38.1cmの正方形です。(MLBは23年から大きくなりました。)

1塁ベースのみソフトボール特有で2つ分のサイズ、白橙2色のツートンカラーがおしゃれな"ダブルベース"です。

ダブルベースはいいものです。安全が確保されてるからこそ全力プレーができます。

一塁手の足を踏んでしまう恐れがないので、セーフになることだけを考えて一目散にベースを駆け抜けられます。

ボクシング選手だって、もし審判が止めてくれなかったら怖くて相手を殴り続けることはできません。


ピッチャープレートはホームベース後端から13.11メートルの位置ある、縦15.2cm、横60.9cmの長方形です。

男女や年齢によって少しずつバッテリー間の距離が異なります。男子一般14.02m、中学女子12.19m、小学生10.67mなどとなっています。

野球のような盛り土マウンドが必要ないため、競技者の体力に応じて柔軟に距離を変えられるのはソフトボールの良いところです。


Excelで計算した値と式、および散布図でプロットした結果は以下のようです。

これで、直線で描ける部分は完成です。

ベース、ピッチャープレートの作図



ピッチャーズサークル、グラスライン

さて次は、ピッチャーマウンドとグラスラインです。これは円と円弧で描かれます。

ピッチャーズサークルはプレート前側中央を中心点とした半径2.44メートルの円です。野球のように盛り土はなく平らです。前方への偏りもありません。

ソフトボールのランナーは野球と違い、リードも盗塁も禁止されています。

より具体的にはピッチャーがボールを持ってこのピッチャーズサークル内に入ると、投手の手から球が離れるまで、ランナーはベースから離れることができなくなります。

グラスラインは内野想定線、あるいはスキンドインフィールドとも呼ばれる、内野の土と芝生の境目を表すラインです。ピッチャープレート後端中央を中心点とした、半径18.29メートルの円弧です。


点を結んで正確な円や円弧を描こうとすると、無数の点が必要となります。実用的な方法として、等角度おきに点を配置した正多角形で近似します。正多角形で近似する方法は円周率の値を求める際などにも利用されます。

ここではピッチャーズサークルは15度おきにしました。360/15=24なので、正24角形となります。

グラスラインは半径が大きいので、プロットした時線がガタガタにならないようもう少し細かくして10度おきにします。

cosとsinでxとyの座標値を計算していくのですが、Excel数式では三角関数を計算する際、角度をなじみのある度(deg)から、ラジアン(rad)に必要があることに注意です。セルへの数式入力の仕方は"RADIANS"を使って、例えば"=2.44*COS(RADIANS(0))"とします(下図のx33の場合)。

Excelで計算した値と式、および散布図でプロットした結果は以下のようです。

いい感じになってきました。

ピッチャーズサークル、グラスラインの作図



外野フェンス

最後は、外野フェンスです。

ホームから外野フェンスまでの距離は国際ルールでは67.06メートル以上と定められています。

ホーム後端を中心点とした円弧のため、どの方向でも同じ距離になります。

野球のように無理に引っ張らなくても、センター返しでホームランを狙うことができます。

45度から135度まで5度おきでExcelで計算した値と式、および散布図でプロットした結果は以下のようです。

外野フェンスの作図

完成です!

座標計算した94個の点たちを結ぶことで、ソフトボール場を描くことができました。




野球と重ねると

おまけで、野球場と重ねてみます。

野球場の外野フェンスは以前計算した、プロ野球本拠地の中でも広いと言われるバンテリンドームナゴヤのものを使います。

ちなみにバンテリンドームの外野フェンスも幾何学的に整った円弧形状ですが、その中心点はホームベース上ではなくインフィールドラインのあたりにあります。

それにより円弧でありながら両翼100m、センター122mというプロ野球の標準的なサイズを満たしており、また同時にそのせいで、他のどの球場よりもホームランになりにくい深い深い左中間・右中間が形成されています。

ソフトボール場と重ねると下図のようです。

野球場&ソフトボール場

外野フェンスの距離感がまるで違います。

ソフトボールの方がフェンスが近いのは、野球よりも飛距離がでないからですが、それは選手の能力の問題ではなく道具の差によるものです。


*****

2028年のロス五輪が今からもう、楽しみです。



では、また。



    参考Webサイト
    (*1)公益財団法人日本ソフトボール協会
        http://www.softball.or.jp/info_knowledge/kiso/tisiki/yougu.html
    (*2)コウフ・フィールド株式会社
        https://catalog.kofu-field.com/book/#target/page_no=69



2021年4月17日土曜日

第64回 一塁手がジャンプ捕球すると、どれくらいセーフになりやすいのか?



長身が有利 

一塁手には長身の選手が向いています。

内野手からの送球が逸れた時、ベースを離れてボールを捕りにいき、それからベースを踏みに戻れば、それだけ時間をロスします。

背が高く手足が長ければ、逸れた送球でもベースから足を離さずに捕球できます。


上は最悪


送球は前後左右、どちらに逸れるのも良くないですが、中でも上に高く逸れるのが一番よくありません。

なぜなら、低く逸れてワンバウンドになるならば、一塁手が上手く捕ることでカバーできます。
また、横に逸れた場合は一塁手が機敏に動くことで、捕球後にベースに素早く戻ることができます。

しかし、高く逸れた送球を捕るために空中へジャンプした場合、素早くベースに戻ることができないのです。

そのため上に送球が逸れた時、最も時間をロスします。



落ちるのを待つだけ


人間が横に移動する時、脚が地面を押して、その反力を受け体の重心が横へ移動します。
つまり脚の筋肉により体を動かしています。

一方、空中へジャンプした後、下へ移動する場合は、地面からの反力を得られません。重力によってのみ体の重心は加速されます。

そのためジャンプした後は素早くベースを踏みたいと思っても、重力により自然に落ちてくるのを待つしかないのです。

ガリレオが斜塔で行った実験で知られるように、重たいものも軽いものも重力により落下する速さはおなじです。
つまり体重の大きい一塁手も、軽量な一塁手も、同じ高さジャンプしたら、地面降りてくるまでにかかる時間は同じなのです。

太って重たい選手が有利ということもなく、身軽で俊敏な選手も、脚力の強い選手も、みな等しく空中で時間をロスします。

そのため、高く逸れてもジャンプせず、ベースから離れずに捕球できる長身選手が有利なのです。



逸れなければアウトだったのに


上記のように、一塁手がジャンプして捕球するとベースを踏むまで時間をロスしますが、それは具体的にどのくらいの時間なのでしょうか。

ごく短時間なら、騒ぐほどの影響はないでしょう。

しかし、実際のプレーを見ると送球が逸れなければアウトだったのに、と思われることが多々あります。

そこで今回は、一塁手がジャンプしてボールを捕球するとどのくらいの時間をロスするのか計算してみます。




ジャンプでロスする時間の計算

ジャンプの頂点でボールを捕球すると仮定します。

[計算式]
重力により落下する距離は、重力加速度gを2回時間積分すれば求まります。式で書くと下のように表されます。

  h=-1/2×g×t^2 : 落下距離

 (g:重力定位数g(=9.81[m/s^2])、t:落下時間)

落下距離hがジャンプした高さh0と同じなるとき、ジャンプした一塁手の足が再びベースに触れます。
そのため、ジャンプによりロスする時間は下式のようになます。

 ho-1/2×g×t^2 = 0
 t=√(2×ho/g) : ジャンプによりロスする時間


[計算結果]

では上記の式に数字を入れて、計算していきます。


30cmジャンプした場合
 
 t=√(2×0.3/9.81) = 0.247 [s]

10cmジャンプした場合

 t=√(2×0.1/9.81) = 0.143 [s]


一塁への送球が高く逸れ、一塁手が30cmジャンプして捕球すると0.25秒時間をロスする、という結果になりました。
同様に、10cmジャンプすると0.14秒時間をロスします。


一塁手が空中にいる間に打者走者は1.8メートルを駆け抜ける 


30cmのジャンプで0.25秒時間をロスする、ということが分かりました。

ではこの時間ロスは内野ゴロアウトをセーフに変えるのに、どのくらい影響するのでしょうか。

0.25秒の間に、時速27km/hで走る打者走者がどのくらい進むのか計算してみると、1.85m(=0.25×27/3.6)も進みます。

一塁手が空中にいる間に、打者走者は1.8メートルを駆け抜けるのです。 

これだけ進むのであれば、セーフになる確率はかなり増えるでしょう。



10cmのジャンプ、0.14秒のロスでさえ、打者走者は1.07m進みます。

内野手の一塁送球がわずか数十センチ高く逸れるだけで、打者走者は1メートル以上進んでしまうのです。
もちろんジャンプしても捕れない程高く逸れてしまえば、一塁でアウトにできないどころか二塁まで進塁を許してしまいます。

そのため、内野手の一塁送球は絶対に、高く逸れてはいけないのです。

高く逸れるならワンバウンドになる方がまだマシ、という意識で投げるべきです。
特に肩の弱い内野手ほど、球速のばらつきにより上下のコントロールが大きくばらつくため、注意が必要です。(第63回参照









よい球がきたら、前に伸びて捕る 




さて、ここまで送球が逸れた場合について計算をしてきましたが、反対に、内野手から低い良い送球が来た場合には、一塁手は両足を大きく開き、前に伸びて捕球します。

できるだけ前方で捕ることにより、捕球するまでの時間を短縮できるからです。

プロやメジャーの選手も、きわどいタイミングのときはできるだけ伸びてとっていますから、それなりに効果があると考えられます。

送球が逸れた場合にはこれができなくなります。
そのため、送球が高く逸れた場合、上記のジャンプによりロスする時間に加え、伸びて前方で捕ることで得られるはずだった時間短縮分もロス時間となります。


次は、一塁手が前に伸びて捕球することにより、どのくらい時間を短縮できるのか計算してみます。


前に伸びて短縮できる時間の計算 


[計算条件]
一塁手が伸びることにより、ベース上よりも1.5m前で捕球できると仮定します。

また、送球の球速は100km/hと仮定します。

内野手は球速よりも捕ってから投げるまでの時間を短くすることを重視する、また一塁手に届くころには空気抵抗により投げた瞬間よりも減速するという点を考慮して、球速は少し遅めとしました。

[計算式]
1.5mという短い距離における球速の変化は無視できるとし、球速を一定とすると、短縮される時間tは伸びた距離を球速で割ることで求められます。
はじきです。

 t = s / v : 短縮された時間

 (s:一塁手が前に伸びた距離、v:送球の球速)


[計算結果]

1.5m手前で捕球した場合
 
 t=1.5 / (100/3.6) = 0.054 [s]


一塁手が1.5メートル前に伸びて捕球すると、0.05秒時間を短縮できる、という結果になりました。


一塁手が伸びると打者走者は40cm走れなくなる 

一塁手が伸びて1.5m手前で捕球することで、短縮できる時間は0.05秒でした。

この間に、時速27km/hで走る打者走者が進む距離は40.5cm(=0.054×27/3.6*100)です。


つまり、伸びずにベース上で捕球すると同着セーフになる場合に、一塁手が伸びて1.5m手前で捕球すれば打者走者がベースを踏む40cm手前でアウトにできるということになります。

言い換えると、一塁手が前に伸びることにより、打者走者の進む距離を40cm奪えるのです。

ざっくり、走速度は送球速度の1/4程度ですから、一塁手が前に伸びた距離の1/4ぐらいの走距離を打者走者から奪うことができるわけです。

そのためきわどいタイミングであれば、伸びることでセーフをアウトに変えるだけの効果十分はあると言えます。





ジャンプで失うトータル時間


送球が高く逸れてジャンプした場合、重力で落ちてくる時間のロスと、前に伸びて捕るこがはできないための時間ロス、この2つが合わさります。

[結論]
 ・一塁手が30cmジャンプして捕球すると、0.25秒ロスし、その間打者走者は1.85m進む。
 ・一塁手が伸びて1.5m手前で捕球すると、0.05秒短縮し、打者走者が進む距離を40cm奪える。
 ⇒そのため、一塁手が30cmジャンプし前に伸びれずに捕球すると、0.30秒(=0.25+0.05)時間をロスし、その間に打者走者は2.25m(=1.85+0.40)進む


内野送球が高く逸れることで、トータルで打者走者が2.25mも進むだけの時間をロスしてしまうという結果になりました。

予想以上に大きな影響です。

内野ゴロ送球におけるコントロールの重要性が、改めて示される結果となりました。








では、また。

2021年3月6日土曜日

第58回 塁を回るランナーの体は、遠心力をどのくらい受けているのか?




外野に飛んだら膨らむ  


内野ゴロを打ったバッターは、真っ直ぐ一塁ベースへ走っていきます。真っ直ぐ走るのが、最短距離だからです。

一方、ツーベースヒットになるような外野へ飛んだ打球の場合には、真っ直ぐではなく、ファールゾーンの方へ斜めに走っていきます。そして、ベースの手前から曲がり始め、膨らんだ軌道でベースを駆け抜けていきます。

ベースのところで急に90度向きを変えるよりも、あらかじめ膨らんでおいた方が走軌道の曲率が大きくなり、体に作用する遠心力が小さく抑えられるからです。

この走り方は、オーバーランと呼ばれます。



もう一つの遠心力対策


ベースを回るランナーはオーバーランに加えて、もう一つ、遠心力に対抗する策を行っています。

ベースを踏むとき、ランナーは体をピッチャーマウンドの方へ大きく傾けているのです。

なぜ傾けるのでしょうか?

それは、体を傾けることで、足が地面から受ける反力の向きを斜めにし、曲がるための横向きの力を発生させているのです。

左に曲がるときの力のベクトル
この横向きの力を「向心力」といいます。

なじみのある「遠心力」は、この向心力と釣り合う仮想的な力、慣性力のことです。

走動作に限らず、曲がるとき曲がりたい方向に体や機体を傾けるというのは、重力のある地球上での常套手段です。

下向き重力と斜め上向きの地面反力を合成すると、上下方向の力が打ち消し合い、横方向の向心力のみが残るからです。

自転車もバイクも、曲がるときには車体を傾けます。

航空機も、ローリングしてバンク角を大きし、翼に働く揚力の向きを真上から斜め上向きに傾けることで、向心力を生み出しています。マッハを超える戦闘機では、ほとんど垂直近くまで機体を傾けて急旋回することもあります。



遠心力の計算 


では、全力疾走しながらベースを回るランナーの体には、いったいどれほどの遠心力が働いているでしょうか?

計算してみます。

[計算式]

遠心力は以下の式で計算されます。

Pc = m×v^2 / r ‐①

ここで、m:選手の体重、v:走速度、r:回転半径。

[計算結果]

体重m=80kg、走速度v=27km/h、回転半径r=9.0mとします。

Pc = 80×(27/3.6)^2 / 9.0 = 500 [N]

力の単位をニュートンから、なじみのあるキロに変換します。

Pc = 500 / 9.81 = 51 [kgf] : 遠心力

一塁ベースを回るをランナーの体には51kgfの遠心力が働いている、という結果になりました。



何Gの遠心力が働いているのか 


計算式①から明らかなように、遠心力は体重に比例します。体重が大きいほど、遠心力も大きくなるのです。
一方、体に作用する重力も体重に比例します。例えば体重80kgの体には、80kgfの重力が働きます。

そのため、重力と遠心力の比で考えてみます。

Pc/m=51/80= 0.64 

従って、一塁ベースを回るランナーの体には重力の0.64倍、つまり0.64Gの遠心力が作用している、ということになります。



人類最速の男  


さて、上記①式に見るように、遠心力Pcは走速度vの二乗に比例します。
そのため、速く走るほど遠心力は大きくなります。

地球上で最も速く走った人は誰か、と聞かれたら、多くの人は彼を思い浮かべることでしょう。

人類最速の男ウサイン・ボルト。

彼の最高走速度は11.6m/sにも達っします。時速に換算すると、41.9km/hです。

ガソリンエンジンもなく、筋肉だけでこれだけの速度を出すのはすごいことです。

これほどの速度で走るとき、いったいどれほどの遠心力が作用するのでしょうか?



ウサイン・ボルトの遠心力  


では、計算してみましょう。

彼は野球選手ではなく、陸上選手ですので、陸上のトラックを走っているときの遠心力を計算対象とします。

100m走ではまっすぐ走り、曲がらないので遠心力は作用しません。
①式で言えばr=∞でPc=0となります。

彼は200m走でも世界記録を持っています。

上記の最高走速度11.6m/sは、200メートル走でスタートから70m地点で記録された値ですが、200メートル走は最初にコーナー部を120m走り、その後直線部を80m走ってゴールするというルールになっているため、最高速度はコーナー部を走っているときの速度ということになります。

また、陸上トラックの回転半径rは37.898mと定められています。これは内側のコースでも外側のコースでも同じです。

[計算結果2]

体重m=94kg、走速度v=11.6m/s、回転半径r=37.898mです。

Pc = 94×11.6^2 / 37.898 = 335 [N]
Pc = 335 / 9.81 = 34 [kgf]

200m走でコーナーを走るボルトの体には、34kgfの遠心力が働いている、という結果になりました。

重力と遠心力の比も計算します。
Pc/m=34/94= 0.36。

200m走でコーナーを走るボルトの体に作用する遠心力は、0.36Gです。


つまり、200m走を人類最高速度で走っているウサイン・ボルトよりも、ツーベースヒットを打って一塁ベースを回る野球のバッターランナーの方が、ずっと大きな遠心力を受けているのです。

それは野球の方が回転半径がずっと小さいためです。



イチローは30度、ボルトは17度  


野球では走る距離を短くするため、なるべくオーバーランによる走路のふくらみを抑えて小さい回転半径で曲がろうとします。
その結果、大きな遠心力を受けることになります。

そしてそれに対抗すべく、大きく体を傾けるのです。滑って転んでしまわないぎりぎりまで傾けます。

下の写真は、ツーベースヒットを打って一塁ベースを回るイチロー選手(左)と、200m走でコーナーを走るウサイン・ボルト選手(右)です。
イチロー選手の体は30度と大きく傾いているのに対し、ボルト選手はその半分程度の17度しか傾いていません。
遠心力の大きい前者の方が、体の傾きもより大きくなっているわけです。





******

以下はデータ参照元の補足です。

野球の回転半径r=9.0mは、ネットで一般公開されている愛知東邦大学の論文から引用したデータをもとに、以下のような作図で推測しました。
高校生のデータとのことなので、プロやメジャーリーガーの走路とは少し違いがあるかもしれません。




また、ウサイン・ボルトの走速度のデータは下記のネットで一般公開されている筑波大学のデータを参考にしました。
http://rikujo.taiiku.tsukuba.ac.jp/column/2016/67.html






では、また。



2021年1月16日土曜日

第51回 左打者はどれくらい一塁に近いのか?




左利き10% << 左打者40%  


左利きの人の割合は、人口の約10%です。

これは大昔から変わっておらず、数万年前の古代人も現代人と同じように左利きは10%程度でした。
どうやって調べたかというと、洞窟の壁画や石器の傷跡の向きからどちらの手で作業したか推測したそうです。

このことから利き腕は文化により決まるわけではなく、遺伝的に先天的に決まるのだと考えられています。

ただし、戦前日本においては左利きは不作法とみなされ矯正される文化であったため、
5%程度と低かったそうです。
本当は左利きの人が10%いても、箸を左手で持つ人は5%しかいなかったわけです。


さて、野球のバッターはどうでしょうか。
左利きの人はそのまま左打ちになりますが、右利きなのに左打ちに転向する人が結構います。
現代のプロ野球界において数えてみると、およそ左打者の割合は40もいます

左利き割合の4倍もの多さです。

引き算すると、右利きなのに左打ちに転向した選手が、全体の30%もいるということになります。

ちなみにプロゴルフの左打ちは約3%しかいません



なぜ左打ちが増えるのか  


野球においてこれほど左打ちの割合が多いのなぜでしょうか。

真っ先に思いつくのが、「左打者の方が一塁に近く、内野安打が増える」というメリットがあることです。

実際、NPB 2018年データを調べてみると、なんと、セ・パ両リーグの内野安打数トップ511人全てが左打者です。

右打者は一人もランクインしていません。

内野安打数トップ5(2018年シーズン)

これはもう、左打者の方が内野安打になりやすいということを疑う余地はありません。
 


そこで今回は、「左打者は右打者に比べどれくらい一塁に近い」のか、バッターボックスから一塁ベースまでの距離を、グラウンド寸法から幾何学的に計算してみました。



一塁ベースまでの距離計算 


[計算条件]

・スタート地点はホームベース後端から52cm離れた位置とする。
 (ボックスラインから約15cmの位置)

ゴール地点は一塁ベース手前ライン側の角とする。

[計算結果]

走路を斜辺とした直角三角形を考え、三平方の定理により計算します。


左打席
Ll = { (Lo/2)^2 + (Lo/2 - s)^2 }
   ={ (27.05/2)^2 + (27.05/2 – 0.52)^2 }
   =26.69 [m]

右打席
Lr = {(Lo/2)^2 + (Lo/2 + s)^2 }
   ={ (27.05/2)^2 + (27.05/2 – 0.52)^2 }
=27.42[m]

左右差
ΔL = Lr - Ll = 27.42 – 26.69 = 0.73[m]

[計算結果おわり]

打席から一塁までの距離は左打者が26.69mで、右打者が27.42mです。

その差は0.73m

よって右打者よりも、左打者のほうが一塁まで73cm近い、という結果になりました。


 






距離差以上に時間差あり

 
距離の差は上記の通りですが、では一塁到達までの時間の差はどれくらいになるでしょうか?

仮に、打者走者の一塁ベース付近における走速度を7.3[m/s](=26.3[km/h])とすると、この73cmの距離差は一塁到達時間にして0.1秒の差になります。



さて、これを実際に選手が走ったときのデータと比べると、どうでしょうか。

[実測データとの比較]

実測データによるとプロ野球の一塁到達時間はおおよそ、左打者が3.7-4.5秒、右打者が4.0-4.7秒となっています。

実際には左右の差は0.3秒ほどで、上記の計算結果0.1秒よりもさらに大きな差があります。

その要因として、次のことが考えられます。
・左打者はスイング後に体が一塁方向を向くためそのまま真っすぐ走り出せるのに対し、
 右打者は90度横に向かわなければならないためスタートが遅れる。
・走力が高い選手ほど左打ちに転向する傾向にある。

一つ目については、実際アウトローの球に泳いだ時やセーフティーバントのときには、その不利がなくなるため、右打者であっても一塁到達タイムが4.0秒を切ることがあるようです。
((参考)パリーグTV : https://www.youtube.com/watch?v=ygH6uLlmxWs)





では、また。



2020年11月14日土曜日

第42回 大谷翔平の回転数が少ないのはなぜか?



平均より6%少ない       


大谷翔平は投手として、日本人最速の4シームを投げます。世界でもトップクラスです。

しかしその一方で、回転数の少なさが指摘されています。

時速100マイルを超える球を投げながら空振りをとれずファールにされる度に「回転数が少ないから球速のわりに当てやすい」と、ヒットを打たれたわけでもないのに悪く言われてしまいます。

4シームの回転数というのは球速に比例する傾向があり、球速100マイルの場合の平均的な回転数は2320rpm程です。
(rpmはrevolutions per minutesの略で、一分間あたりの回転数を表します。)

一方トラックマンで測定された大谷投手の100マイル時の回転数は2180rpmで、平均よりも6%程少なくなっています。

ちなみに人類最速の球を投げることで有名なチャップマンの100マイル時の回転数は2680rpmで、平均よりも16%も大きくなっています。
球速だけでなく、回転数も群を抜いています。


4シームの威力に影響しているかは別として、大谷投手の回転数が少ないというの事実のようです。

では、なぜ大谷投手の球は回転数が平均よりも少ないのでしょうか



指のフックを保ちたい       


4シームの場合、人差し指と中指の二本をボールに沿うようフックを作って握ります。



リリースの瞬間この二本の指はボールを前方に強く押しています。
そして、その反作用としてこの二本の指はボールから後方への慣性力を受けます。

このとき握力が弱いと指が伸ばされてしまい、その結果ボールにあまり回転がかからなくなります。

回転数の多い球を投げるためには、リリースの瞬間まで人差し指と中指のフックを保つことが必要であり、そのためにはボールに押し負けないよう握力がかかっている必要があります



回転数の多い投手との違い       


藤川球児、和田毅、山本昌。

大谷投手とは反対に回転数が多いと言われている投手たちです。

彼らと大谷投手のリリースの瞬間の写真を見比べてみると、ある違いがあることに気が付きます。

分かるでしょうか?
















それは、グラブの形です。

回転数の多い投手のグラブは握りつぶされています。

一方、大谷投手はグラブを開いたまま投げています。



左がグーなら、右もグー       


人間の体には連合反応という性質があります。

片方の手を動かすと、もう一方もそれに連動して同じように動く性質のことです。

握力に関してもそうです。

歩くときや走るときに、手を握っている人もいれば、開いている人もいます。
人それぞれです。

しかしどんな人でも必ず両手は同じ形になっています。

右手をグー、左手をパーにして歩いたり走ったりする人はいません。

無意識のうちに右手がパーなら左手もパー、右がグーなら左もグーになっています。

片方をグーにするともう一方も自然と握力がかかるわけです。

投球においても同じで、左手でグラブを握りつぶせば自然とボールを持った右手にも握力がかかるのです。

しかし大谷投手は何らかの理由でグラブ側の手を開いたまま投げているため、右手のフックが弱まってしまい、その結果回転数が減少してしまっていると考えられます。



投げるための道具       


投手にとってはグラブは投げるための道具です。

そのため大抵の投手は、下図左のような型がついています。
ボールを持った手と同じように握力をかけるため、親指が人差し指と中指の間にくっつくように閉じられています

投手のグラブ、野手のグラブ

一方野手のグラブはボールを捕球するための道具であり、そのため右側のような型がついています。
親指が薬指とくっつくように閉じられ、これによりポケットが広く使えます。

もしかしたら、大谷投手は二刀流で野手の意識も強いため、野手用の型がついたグラブを使って投げておりそれが原因なのかもしれません。


ホップ量は小さくない       


大谷投手の4シームは回転数が少ない。

その上、ボール回転軸にジャイロ成分が多めに混じっているそうです。

では、ホップ量が小さいのか、というと、そうでもありません

(ピッチングデザイン、集英社、お股ニキ著、2020年発行 より引用)


上記のトラッキンデータを見るとホップ量は、40cm強あります。

これはダルビッシュ投手や前田健太投手と同程度で、MLB全体の中でも平均的な値です。

つまり、ホップ量が小さいから打たれるのではなく、平均的で打者が慣れているので当てやすいという方が正確なようです。

しかしそうなると今度は、なぜ回転数、回転軸ともによくないのに平均と同じだけのホップ量を生み出せているのか、というのが不思議で気になってしまいます。




では、また。





2020年10月24日土曜日

第39回 硬式球と軟式球、よく曲がるのはどちらか?



硬式球vs軟式球       

硬式球と軟式球、どちらが変化球がよく曲がるか?

子供の頃は軟式野球、高校や大学の野球部では硬式を経験し、社会人になってからの趣味の野球では再び軟式でプレー。

多くの野球愛好家がたどる王道パターンです。

そんな軟式と硬式どちらも経験してきたプレーヤーの間で、たびたび話題になるのがこのテーマです。

そこで今回は、硬式球と軟式球どちらがよく曲がるのか計算してみました。


ボールの曲がりやすさ      

ボールによって曲がりやすいものと曲がりにくいものがありますが、それらはどのように決まるのでしょうか?

ボールの軌道を曲げる力は、ボールの進行方向と垂直な向きに作用する「揚力」です。回転によって発生するマグナス力はこの揚力の一種です。




[計算式]

揚力Lは以下の式で表されます。

L = CL×(1/2×ρ×v^2)×A ‐①
(CL:揚力係数、ρ:空気の密度、v:ボールの速度、A:ボールの断面積)

ここで、断面積は
A=π×d^2 / 4  ‐② (d:ボールの直径)。

ボールが曲がる方向への加速度d2y/dt2は、揚力を重量で割ればよいので、以下のようになります。

d2y/dt2 = L/m   ‐③ (m:ボールの重量)

従って、③式のLに①式を代入し、Aに②式を代入すると、以下のようになります。

 d2y/dt2 = (CL×ρ×v^2×π/8) × (d^2/m)  ‐④ 

④式から、d^2/mの値に比例して、ボールが曲がる方向への加速度d2y/dt2が大きくなることが分かります。

つまり、直径の二乗を重量で割った値(d^2/m)が、そのボールがもつ「曲がりやすさ」を表します。

(厳密には揚力係数CLもスピンパラメータSp(d)を介して直径dに依存しますが、ここでは省略しています。)

では、この曲がりやすさの値を硬式球、軟式球それぞれについて計算してみましょう。


 [計算結果]

硬式球
重量 : m=145[g]、直径 : d=7.4[cm]、曲がりやすさ : d^2/m=0.375[cm^2/g]


軟式球
重量 : m=138[g]、直径 : d=7.2[cm]、曲がりやすさ : d^2/m=0.376[cm^2/g]

重量および直径は上下限の中間値を使用しました。 

d^2/mの値は両者ともほぼ同じです。
つまり、硬式球と軟式球ではボールのもつ「曲がりやすさ」はほぼ同じ、ということです。


回転のかかりやすさ       

それならば、変化球の曲がり具合はどちらも同じ、では、ありません。

ボールを横に曲げる揚力は、ボールの回転に起因するマグヌス力です。
ボールの回転数が多いほどマグヌス力は大きくなり、変化球は良く曲がります

具体的には上記の揚力式の中に含まれている揚力係数CLが回転数により大きくなります。

硬式球と軟式球どちらの球がより回転数が大きくなりやすい、つまり、どちらの球が回転がかかりやすいか、について計算していきます。



ボールにトルクを与えるとボールは回転します。

トルクと回転数の関係は下式で表されます。
トルクTを時間積分した力積が、角運動量(ω )と等しくなります。

T dt = I×ω = I × N/(2π)
(T:トルク、I:慣性モーメント、ω:角速度、N:回転数)

そのため回転数Nは、
N = ω/(2π) = (T dt) / I 。

同じ力積(T dt)が与えられる場合、慣性モーメントIに反比例して回転数Nが大きくなります。

つまり、慣性モーメントの逆数1/Iが、そのボールの「回転のかかりやすさ」を表します。

中身が違う          

この慣性モーメントIの値が、硬式球と軟式球では違ってきます。

なぜなら、硬式球は中身が詰まっているが、軟式球は空洞だからです。



[計算式2]
球体の慣性モーメントIは以下の式で表されます。

中空
I = 2/5×m×(r^5-ri^5)/(r^3-ri^3)  -①
(m:ボール重量、r:ボールの外半径、ri:ボールの内半径)

中実
①式にri=0を代入。
 I = 2/5×m×r^2  -②

この式を使ってボールの回転のかかりやすさの値を硬式球、軟式球それぞれについて計算します。 

 [計算結果2]

硬式球
重量 : m=145[g]、半径 : r=7.4/2=3.69[cm]、
慣性モーメント : I=2/5×m×r^2 =791[g-cm^2]
回転のかかりやすさ : 1/I=1.26×10^-3[1/(g-cm^2)]

軟式球
重量 : m=138[g]、外半径 : r=7.2/2=3.60[cm]、内半径 : r=2.81[cm]、
慣性モーメント : I=2/5×m×(r^5-ri^5)/(r^3-ri^3) r^2 =968[g-cm^2]
回転のかかりやすさ : 1/I=1.03×10^-3[1/(g-cm^2)]

1/Iの値は、硬式球の方が軟式球よりも1.22倍(1.26/1.03=1.22)大きくなりました。

つまり、硬式球の方が、約1.2倍ボールに「回転がかかりやすい」、ということです。

重量が軽く、径の小さい軟式の方が回転がかかりにくいというのは意外に思われるかもしれません。

中空であるということはそれだけボールの重量がボールの中心、つまり回転軸から離れた位置に偏っていることになるため、一様に重量が分布している中実球よりも慣性モーメントが大きくなるのです。


結論            

というわけで、結論は以下のようになりました。

・硬式球と軟式球ではボールの持つ「曲がりやすさ」は同じ。
・硬式球の方が中実のため慣性モーメントIが小さく、より「回転がかかりやすい」
・その結果、「硬式球の方が変化球がよく曲がる」。





*****

余談:M>A?       

軟式野球をプレーしている人はご存知と思いますが、2018年から軟式球の仕様が変わりました。

一般向けのA号球と中学生向けのB号球は統一されてM号球に、小学生はC号球からJ号球に変わりました。

旧式のA号球よりも新型のM号球の方が、打球飛距離がアップしたことが公にされています。

一方、変化球の曲がり具合については、特に、情報公開されていません。

そのため個人の感想になりますが、私がプレーした感覚や、他の人に聞いた範囲ではA号球よりも、M号球の方が変化球の曲がりがかなり大きくなっています

M号球の方がA号球よりもボールの直径dが少し大きいため、ボールの曲がりやすさd^2/mの値が大きくなった一方で回転のかかりにくさIの値はそこまで増加していないということがあるのかもしれません。

あるいは一部で話題になった、あのハート形の表面形状により、同じ回転数でも揚力係数CLがアップしているのかもしれません。

真相は分かりませんがM号球の開発に関わった専門家たちはA号球が硬式球より曲がらないことを事前に把握しており、硬式球に近づけるために何かしらの科学技術をM号球へ投入したのではないか、と推測されます。



では、また。





2020年10月3日土曜日

第36回 後攻をとれる確率



どちらが有利か?       

野球の試合で先攻と後攻を選べるなら、どちらにしますか?

一般的には後攻の方が有利だといわれており、人気があるようですね。

プロ野球では後攻の方が勝率が高い、という統計的な結果が出ています。

しかしながら、後攻の時は必ずホームゲームなので、ホームゲームが有利という要因も上乗せされており、純粋に後攻が有利とする根拠には弱いようです。

ホームゲームの関係ないアマチュア野球については意見が分かれますが、後攻有利説がやや優勢なようです。


唐突な問題       

さてここで、

唐突に数学の問題です。

[問題]

1/3を順に掛けて行くと、以下のようになります。

1/3 = 0.333333333
1/3×1/3 = 1/9 = 0.111111111
1/3×1/3×1/3 = 1/27 = 0.037037037
1/3×1/3×1/3×1/3 = 1/81 =0.0123456789


では、

これをずっと永遠に続けて行き、全部足し合せたらいくつになるでしょう?

1/3 + (1/3×1/3) + (1/3×1/3×1/3) + (1/3×1/3×1/3×1/3) +
=(1/3)^1 + (1/3)^2 + (1/3)^3 + (1/3)^4 +
=????


[問題おわり]


これは等比級数の和の公式を使うことで解くことができます。

※ここからしばらく数学の計算が続きます。
面倒な方は(*゚▽゚)まで読み飛ばしてください。


[解答]

等比級数の和の公式
Sn = a + a×r + a×r^2 +a×r^3 + … + a×r^n
= a×(1-r^n)/(1-r)

今回の場合
a=1
r=1/3
求める解x =Sn-a
なので、

x= a×(1-r^n)/(1-r)- a
    =(1-(1/3)^n)/(1-(1/3)) 1

 ここで、
1より小さい数はかけるごとに小さくなっていくため
n=∞のとき、(1/3)^n0となる。

従って
x=(1-0)/(1-(1/3)) 1
 =3/(3-1)-1 = 3/2 - 1 = 1/2

[解答おわり]

(*゚▽゚)

と言うわけで全部足し合せると1/2になります。

実はこの問題、
こんなにきちんと計算しなくても答えは分かるのです。



別解         

話を元に戻します。

先攻、後攻についてですが、高校野球の甲子園ではルールとして「審判委員立会いのもと、両校主将のジャンケンで決定される」ことになっているそうです。

では、二人でジャンケンしましょう。




一回目で勝つ確率はグー、チョキー、パーどれをだしても1/3です。
一回目はあいこで、二回目に勝つ確率は1/3×1/3です。
一、二回目ともあいこで、三回目に勝つ確率は1/3×1/3×1/3です。

気づきましたか?

何回目でもよいからとにかく勝つ確率は

1/3 + (1/3×1/3) + (1/3×1/3×1/3) +(1/3×1/3×1/3×1/3)+

です。

そうです、

先ほどの問題と同じです。

ジャンケンで勝つ確率が1/2なのは自明ですね。


逆に言えば、ジャンケンは数学的に完全に平等であることが証明されているので、安心して勝負を運にまかせることができるのです。

パチンコや競馬などは胴元が確率を巧妙に操作しており、運任せではかならず消費者が損をするようにできています。

野球賭博もです。

気を付けてくださいね。


余談         

こんな話もあります。

 


ゆうとくんは誕生日に、魔法のケーキと魔法のナイフをもらいました。

魔法のケーキはいつまでたってもくさりません。
魔法のナイフはどんなに適当に切ってもちょうどに半分になります。

ゆうとくんはケーキが大好きなので毎日毎日
このナイフでケーキを半分に切って一切れずつたべます。

一日目はホールのケーキを半分に切って、片方を食べて、片方をとっておきました。

二日目はとっておいたケーキを半分に切って、その片方を食べて、もう片方をとっておきました。

三日目も、四日目も同じです。

人にあげたりせず、全部ひとりでたべるつもりです。


ところで、もうひとつもらったものがあります。


それは「永遠の命」です。

さて、今から一億年後の未来、
ゆうとはどれだけたくさんのケーキを食べているでしょう?



...そう、たった一個です。





では、また。







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